ODR実証実験開始/年内にシステム提供見込みも

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 ODR(オンラインでの紛争解決手続き)の国内への導入の動きが本格化している。ODRシステムの提供を手掛ける事業者は、いずれもEC・通販企業への提供を視野に入れている。ミドルマン(本社東京都)は2月、家事代行の仲介を手掛けるタスカジ(本社東京都)にシステムを無料で提供し、実証実験を始めた。キビタス(本社東京都)は年内にもサービスを提供する計画だ。一般社団法人ODR事業者協会の大橋良二代表理事は、勉強会などの機会を通じて弁護士や事業者の理解を深め、認知拡大に力を注ぐ方針だ。

 ミドルマン(本社東京都、三澤透社長)は、ODRシステム「Teuchi(テウチ)」を手掛けている。18年7月から試行錯誤を重ねて開発し、今年2月から実証実験を開始した。システムはタスカジが仲介するハウスキーパーと、弁護士などの調停人、ハウスキーパーの利用者をつなぐ。利用者とハウスキーパー(=タスカジ)の間にトラブルが生じた場合、オンライン上で調停人が立ち会い、和解案を提案してトラブルの解決に導く。
 三澤社長は、トラブルの解決をオンライン上で行うODRシステムの提供は、ECと相性がよいとみている。システム導入の提案はシェアリングエコノミーを手掛ける事業者が主だが、EC・通販企業のニーズがあれば、積極的に対応していく考えだ。タスカジと同様に、まず実証実験からスタートする。
 サービスのローンチは4月中旬を予定している。現在は株式型のクラウドファンディングを行っている。一般消費者のODRへの関心度合いを探る絶好の機会とも捉えている。「ECやシェアリングエコノミー業界にとどまらず、さまざまなニーズを探っていく」(三澤社長)と話している。
 キビタス(本社東京都、森下将宏社長)は、システムの開発段階だ。ベンチャーキャピタルによる資金調達も検討している。
 ECを主軸としたプラットフォーマーへの提供を事業の端緒とする考えで、月額制のSaaS型システムを予定している。キビタスのODRシステムを通じてユーザーが企業に紛争の解決を申し立てると、提携ADR機関が和解案を提案する。弁護士などの調停人がオンライン上で立ち会う。
 森下社長は、近年のデジタル化、自動化、効率化の流れの延長にODRが位置付けられると考えており、「ODRも受け入れられていくのではないかと思う」(同)とみている。
 ODR導入に当たって外せない留意事項が、弁護士法第72条の存在で、弁護士以外が法律事務を行うことは禁じられている。
 ODRシステムを提供する事業者は、提供に当たって(1)ODRの前身といえるADR法に基づき、認証ADRを取得する(2)認証ADR機関や弁護士と提携する(3)システムだけを導入企業に提供し、法的対策は導入側に任せる─のいずれかの形態をとる必要がある。
 ミドルマンはシステムの提供のみを行い、ニーズに応じて導入側の法的対策を支援する。キビタスは現在、認証ADR機関や弁護士との提携を模索している。
 一般社団法人ODR事業者協会の大橋良二代表理事は、協会の活動を通じて、弁護士、システム開発事業者のマッチングを積極的に行う考えで、導入事業者との結び付きにもつなげたいとしている。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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