【ふるさと納税市場が拡大】 負け組の”東京”が反転攻勢/返礼品開発で税収に伸びしろ(2024年11月7日号)

  • 定期購読する
  • 業界データ購入
  • デジタル版で読む

 ふるさと納税市場が拡大している。23年度のふるさと納税全体の寄付の受入額は、前年度比21.7%増の1兆1175億円となった。寄付額を伸ばした自治体では、魅力のある返礼品を開発したり、掲載するポータルサイトを増やしたりしているようだ。一方、これまでふるさと納税制度の「負け組」となっていたのが東京都の各区市町村だった。東京都内では、制度発足後、税収が大きく減少した自治体も少なくなかった。そんな、東京都の自治体においても、ふるさと納税に参入し、巻き返しを図る動きが活発している。

■ビジネス研修も返礼品

 東京都主税局によると、23年度の東京都の、ふるさと納税によって東京都以外の自治体に流出した税収額は、1899億円以上に上ったとしている。
 東京都は、「都市部だけでなく、地方にとって有益な制度となっていない。ふるさと納税制度を抜本的に見直すべき」という見解を示している。 そんな中、東京都千代田区は10月1日、返礼品を伴う、ふるさと納税の寄付の募集を初めて開始した。現在、「さとふる」「楽天ふるさと納税」「ふるなび」「ふるさとチョイス」の四つのポータルサイトで返礼品を掲載している。千代田区に通勤・通学している人や、これまで千代田区にゆかりがある人に、ふるさと納税を活用してもらいたいとしている。
 千代田区は、「ローストビーフ」や「オリジナルご当地インク」など、53種類の返礼品を提供している。返礼品の中には、「そば打ち体験」や「ビジネス研修」などの?コト消費?もある。
 千代田区のふるさと納税の返礼品として「Amazon日本での販売ノウハウ研修」を提供している、DMGコンサルティング(本社東京都)の藏内淑行社長は、「例えば、ECを展開する企業の社長に、個人で千代田区に寄付するふるさと納税の返礼品として、当社のアマゾンのノウハウ研修を選んでもらうといったシチュエーションを想定している。そうした経営者は、若手の社員に研修を受けさせたりするだろう」としている。
 DMGコンサルティングのアマゾンビジネス研修の通常価格は1万円。寄付額3万8000円の返礼品になっているという。
 千代田区においても、ふるさと納税による税収の減少は深刻だったという。23年度においても、千代田区が本来住民税で得られたはずの税収が、ふるさと納税によって、20億円が他の自治体に流出したとしている。「ふるさと納税により、税収が年々減少していくという課題意識があった。まずは、掲載するプラットフォームの特集ページなどに取り上げてもらるえるようにし、返礼品の露出を増やしていきたい」(千代田区総務課ふるさと農政担当)と意気込む。
 東京都主税局によると、東京都の62市区町村のうち、千代田区を含めた55自治体が、返礼品を伴うふるさと納税の寄付の受け入れを行っているそうだ。


■8・9月に駆け込み需要

 23年度の全国のふるさと納税の状況を見ると、寄付額が1~15位までの自治体では、11自治体が前年度比で2桁以上の成長を遂げていた。寄付額を50%以上伸ばした自治体も五つあった。

(続きは、「日本流通産業新聞」11月7日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

Page Topへ