【コールセンター】 〈コールセンター活用術を聞く〉AIGATE 竹尾昌大社長/”顧客の声”は資産、安易なアウトソースは禁物

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 通販企業やECサイトのM&A、事業再生を支援するAIGATE(アイガテ、本社東京都)の竹尾昌大社長はこれまで、多くの通販企業でコールセンターの改善を手掛けてきた。AIGATEグループでもコールセンター会社を保有しており、AI時代に向けて顧客応対のデータ化を進めている。「顧客の声は資産」と話す竹尾社長は、コールセンターを安易にアウトソーシングする通販会社に警鐘を鳴らす。

 多くの通販企業は電話での顧客対応を最小限にしたいと考えると思います。顧客のLTVを高めるために電話対応の重要性が高いリピート通販企業でも同様で、効率化を図るという名目でコールセンターをアウトソースするケースが増えています。
 ただ、コールセンターをアウトソースすることで、顧客理解はどうしても低下してしまいます。本来、マーケティングを行う上で顧客を知ることは必要不可欠なはず。通販企業は直接顧客との対話を分断されることで、顧客の姿を見失いがちになり本質的なサービスの改善ができなくなる可能性があります。

■離脱率を25%改善
 AIGATEグループで手掛けている通販企業は、アウトソーシングしていたコールセンターをグループ企業に移管したことで、離脱率を15%から40%に改善できました。
 これは顧客理解を深めたことで実現できた結果です。何をきっかけに商品を買ったのか、どんな理由で退会しようとしているのか、顧客の声をダイレクトに聞くことで、顧客対応時のコミュニケーションを変えたり、サービス内容をブラッシュアップすることができたのです。
 さらに顧客の声を商品開発に生かすこともできます。先日、1年半ぶりにリニューアル発売した新商品は顧客の声を基に開発しました。頭皮ケア商品によくあるアルコール臭をカットしたことで顧客から評価も高く、売れ行きも好調です。

■生の声を改善生かす
 私はブックオフの店長をしていた時代から顧客の声を大事してきました。リアル店舗だと対面で接客するのでお客さまの声がどんどん入ってきます。
 例えば「購入した書籍に線が入っていた」というクレームがありました。「100円の古本なんだから線くらい入っていても仕方がない」と考える経営者もいると思いますが、顧客目線に立てば購入した商品に線が入っていたら嫌なのは当たり前です。
 そのクレームをきっかけに、買い取り時の検品を入念に行うようにしましたし、もし顧客から同様のクレームが来たら、代金をお返しして、無料で商品を差し上げるような取り組みを行いました。顧客の声を聞くことができればルールやサービスのブラッシュアップができるのです。
 これは通販でも同様で、メーカーや販売者と顧客の声を聞けるコールセンターが分断されていると、貴重な資産を有効に活用しづらくなります。

■Q&Aデータが資産に
 今後、AIの時代に入ったときに、顧客とのやり取りのデータはさらに価値を生むと考えています。近い将来、ユーザーはスマホでチャットボットとやり取りをして商品を買ったり、問い合わせをするのが当たり前になります。
 チャットボットが顧客の質問に答える際にはFAQのデータベースが重要になります。コールセンターで顧客とのQ&Aをデータとして蓄積していれば、自分たちのブランドやショップに最適化された高い精度のチャットボットを構築することができます。
 AIGATEグループではすでにコールセンターにおけるQ&Aのデータベース化を進めています。音声データをテキストに落とし込む技術はかなり進んでおり、高い精度でデータ化できるようになりました。
 これはAIGATEがグループにメーカーとコールセンターを抱えているからできることです。まだ実験段階ですが、コールセンターのデータベースは必ず貴重な資産になると考えています。
 もし興味がある通販会社がありましたら、コールセンターの受託だけでなく、音声データベースの蓄積もお手伝いさせていただきます。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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