【コールセンター】 〈インタビュー〉富士通コミュニケーションサービス 乙黒淳社長/価値創造モデルに変革

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 ICTの分野に強い富士通コミュニケーションサービス(本社神奈川県、乙黒淳社長、(電)050—3163—8300)は今年6月、福岡・糸島市にサテライトオフィスを開設した。福岡県内にサテライトオフィスを置くのは2カ所目となる。地方に拠点を置き、安定したビジネスモデルを構築している。コールセンター拠点における雇用への取り組みや、今後のビジネスモデルについて乙黒社長に聞いた。

■福岡に2拠点目
 ─今期の受注状況は。
 ちょうど上半期が終わった段階だが、受注は順調に伸びており、EC関連のビジネスが増えている。大手企業との取引も、従来よりも規模が大きくなってきている傾向がある。
 今年6月、福岡・糸島市にサテライトオフィスを新設した。ここでは新日本製薬の商品に関する、お客さまからの問い合わせ対応を専門に行う。実績のある企業と協同して業務に取り組みたい。解除式は10月23日に行う予定だ。
 ─今後も地方に拠点を開設する方向性なのか。
 福岡にサテライトセンターを2カ所開設したのは、福岡からの助成金があることも影響している。サテライトオフィスは人事・総務などのコーポレート機能がないため、母店の近くに拠点を置く必要がある。ビジネスモデルは確立してきているので、理論上は全国展開も可能だ。
 福岡では豊前市に16年、地域密着型のサテライトオフィスを開設した。もともと職業訓練場だったもので年に1、2回しか使っていなかった場所をサテライトオフィスに作り替えた。遊休施設を活用し、地域の雇用創出につながっている。企業と県の間でウィンウィンの関係ができている。
 運用状況は非常にうまくいっている。豊前市では当初12席で開始したが、社員全員が辞めることなく勤務しており50席に拡張した。順調に人員を増やしている最中だ。こうした安定したビジネスモデルを築けたことが、糸島サテライトオフィスの開設につながっている。

■CX向上に努める
 ─従業員の雇用継続のためには、どのような施策を行っているのか。
 ここ数年、職場環境の改善・見直しに注力している。現在12カ所の拠点を持っているが、各センター長が工夫して、雇用環境に配慮した取り組みを行っている。
 従業員が働く上で最も大切なことは、職場の人間関係だ。社員同士に横のつながりを持ってもらうため、各センターでさまざまなセミナーを行っている。正社員から派遣社員までを対象とした無償のものと、一部有償だが割安で参加できるセミナーがある。
 コールセンター業務にあたる上で役に立つ講座はもちろんだが、ヨガ、パン作り、梅酒づくりなど、カルチャー的なものまで内容は多岐にわたる。各地域で特色ある企画を打ち出しており、仙台では芋煮会を開いた。各センターが独自のイベントを企画することで、センター間同士が刺激し合うといった相乗相果もある。
 ─今後の展望は。
 人手不足の問題を解決するために、労働集約モデルから価値創造モデルに働き方を変革する必要があると感じている。コールセンターは、コストセンターからプロフィットセンターとしての役割を果たすようになり、今はエンゲージメントセンターとしての機能が求められている。長くクライアントと付き合っていくことや、ロイヤルカスタマーを作ることに重きを置いたセンターとして、CX(カスタマーエクスペリエンス=顧客経験価値)向上に努めていく。
 今年から経営戦略室を新たに立ち上げた。新しいモデルを構築するために現在、具体的な施策を練っているところだ。


〈プロフィール〉
 乙黒淳(おとぐろ・あつし)氏 早稲田大学政治経済学部卒、80年に富士通入社。94年に富士通コミュニケーションサービスに出向。マーケティング本部販売推進課長、取締役事業推進本部長などを歴任。13年6月から現職。56年生まれ、神奈川県出身。趣味はロードバイクと音楽鑑賞。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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