【ヤフーVSアスクル】 岩田社長退陣は不可避か/”社長のみ”を標的にするヤフーの狙い

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アスクルの独立役員会が7月23日に開いた記者会見では、戸田一雄社外取締役(写真右)などがヤフーの手続きの問題点を指摘した

アスクルの独立役員会が7月23日に開いた記者会見では、戸田一雄社外取締役(写真右)などがヤフーの手続きの問題点を指摘した

 ヤフーが7月17日、連結子会社であるアスクルの岩田彰一郎社長の再任に反対すると発表してから1週間が経過した。アスクルは7月18日に岩田社長や取締役3人が記者会見で、ヤフーの手法を批判。同23日は社外役員で結成している独立役員会がヤフーの不当性を指摘する記者会見を行った。アスクルはヤフーに業務・資本提携の解消を求める協議を申し入れているが、ヤフーは協議には応じず、同24日には、岩田社長の再任に反対する議決権を行使したと発表した。このままでは岩田社長の退陣は不可避であり、ヤフーの実効支配体制となる。岩田社長のみに退陣を求めるヤフーの本当の狙いについて分析する。

■アスクルが会見で訴え

 ヤフーは7月17日、岩田社長の再任に反対する旨を公表し、両社の対立が表面化した。アスクルは7月18日、ヤフーの発表に応じる形で記者会見を行い、ヤフーの取り組みについて見解を示した。
 アスクルはヤフーの岩田社長の退陣要求に対して、「役員刷新ではなく社長のみの退陣を要求していることや、ロハコの事業譲渡だけを求め譲渡後のプランを語らずに事業譲渡を求めていること、レピュテーションリスク(企業の評判を下げて業績を下げる危険)を冒してまで強硬に出てくることなど、すべてが不可解だ」(岩田社長)と憤りをあらわにした。
 ヤフーはアスクルの会見を受けて、(1)ロハコ事業の譲渡を申し入れる方針がない(2)岩田社長の後任をヤフーから派遣する意思はない(3)業務・資本提携関係の見直しについての協議は不要─などの見解を発表した。


■ヤフーの説明は虚偽

 アスクルは7月22日、ヤフーの発表に応じて、「ヤフー社が『ロハコ事業を譲渡する考えがあるのかの意向をうかがったに過ぎない』としているのは明らかに虚偽」と反論している。
 ヤフーからは再三にわたりロハコ事業の譲渡について相談があり、譲渡の可能性について詳細な質問を受けているという。
 さらに「業務・資本提携契約を違反する行為を取っておきながら、同契約の見直しについての協議は不要というのは暴論」だと批判している。
 アスクルは同日、ヤフーに対して、業務・資本提携関係の見直しについて再度、協議の申し入れを行った。


■法的な問題点を指摘

 アスクルは7月23日、ヤフーからの社長退陣要求に関する法律意見書を取得したと発表した。早稲田大学名誉教授の上村達男氏は意見書において「株式を多数有していれば無条件に責任なき支配が貫徹されるわけではない」と指摘している。
 さらに上村名誉教授は、「ヤフーやプラスから派遣された取締役は注意義務を怠った(過失がある)という次元ではなく、ヤフーやプラスの立場でアスクルを害する意図、すなわち悪意に基づく言動といえる。彼らは取締役として、アスクルに敵対的な対応をとったのであるから、アスクルに生じた損害について、損害賠償責任を負う」とも説明する。
 他にもアスクルのガバナンスシステムを無視した手続きの不当性なども記している。


■独立役員会も問題指摘

 アスクルの社外役員で組成している独立役員会は同日、記者会見を実施した。

(続きは、「日本流通産業新聞」7月25日号で)

アスクルは7月18日、岩田彰一郎社長(写真左から2人目)や吉田仁取締役(同1人目)、吉岡晃取締役(同3人目)、木村美代子取締役が記者会見を開き、ヤフーの取り組みを批判した

アスクルは7月18日、岩田彰一郎社長(写真左から2人目)や吉田仁取締役(同1人目)、吉岡晃取締役(同3人目)、木村美代子取締役が記者会見を開き、ヤフーの取り組みを批判した

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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