楽天は14年12月期の決算を発表し、国内EC流通総額が初めて2兆円を超えたことが分かった。14年10―12月期(第4四半期)の「楽天市場」の流通総額におけるモバイル比率は44%に拡大。3年前からスマートフォン(スマホ)対応をはじめとしたモバイル対策を出店者に訴えてきた。「用意周到に準備してきたことが早く2兆円を突破できた要因」(三木谷浩史社長)としている。
実質スマホ比率50%超
楽天の14年12月期の国内EC流通総額は、前期比13・7%増の2兆100億円だった。スマートデバイス向けのサービスを強化したほか、ビッグデータを活用したマーケティングや「楽天スーパーセール」などの大型セール企画を積極的に展開したことが流通額拡大に寄与した。
「楽天市場」の第4四半期のモバイル比率は44%だったが、「スマホを見て買うのはPCという人も多いため、実質のスマホ比率は50%を超えている」(同)と話している。
第4四半期だけの国内EC流通総額は前年同期比6・6%増の5580億4000万円。「楽天市場」のユニーク購入者数は同2・1%増の1584万人となり、「優勝セール」でユーザー数を伸ばした13年実績をさらに上回った。
「優勝セール」で発生した二重価格問題を教訓に、14年1月から「楽天市場品質向上委員会」を立ち上げ、安心・安全に買い物ができる売り場の構築に取り組んでいる。
不当な価格を監視するためのシステムに大規模な投資をしたほか、出店審査も強化。14年の新規申請不許可率は13年の約2倍となる12・4%となった。
14年12月時点の「楽天市場」の出店店舗数は前年比1・3%減の4万1442店舗だった。「出店手数料を無料化する他モールとは逆行して、より高いクオリティーを意識している」(同)と話している。1店舗当たりの平均年間流通額は同12・6%増の4810万円に拡大した。
出店プランの比率では、月額利用料が高く、より多くの商品数が登録できる「メガショップ」と「スタンダード」の割合が増加。全店舗に占める「メガショップ」と「スタンダード」の合計比率は14年12月時点で前期より4・5ポイント増えて43・1%となった。
新販売形態の開発強化へ
海外ECサービスは、マーケットプレイスの流通総額が堅調に推移。このほか、14年10月に買収した会員制ネット通販サイトを運営している米国のEbates(イーベイツ)社が、流通総額の成長を飛躍的に拡大させた。
イーベイツ社の第4四半期における流通総額は前年同期比65・1%増(為替調整ベースで同51・3%増)の1435億円となっている。
国内EC流通総額が2兆円を超えた今後もさらに業績を拡大していくため、14年12月に開始した「楽天スーパーディール」などの新しい販売形態の開発に力を入れていく。
「楽天スーパーディール」は30%以上のポイント還元率の商品が並ぶ売り場だ。1月の出店者向けイベントで三木谷社長は「将来的に『楽天市場』の流通の30~40%を占め、1兆円を超えていくサービスになると思う」と話していた。
このほか、ビッグデータを活用して個人の好みに合わせたレコメンドサービスの提供を強化していく。スマホの買いやすさも追求していく。
商品が駅などで受け取れる専用ロッカー「楽天BOX」も大阪などで試験的に運用している。利用者から好評を得ており、拡大展開する計画だ。商品の受け取り方法の多様化も今期の流通総額の成長に欠かせないと捉えている。
〈楽天 通期決算〉 国内流通総額が2兆円に/周到なモバイル対策が鍵
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