滋賀県野洲市/「訪販登録制」条例が成立/他の自治体に波及の恐れも

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「野洲市くらし支え合い条例」の概要

「野洲市くらし支え合い条例」の概要

 滋賀県野洲市は6月21日、訪販事業者に登録を義務付ける条例を成立させた。登録していない事業者は市内で勧誘を行えなくするほか、登録事業者には「訪問販売お断りシール」を貼った家に対する訪問勧誘を禁止する。違反者に対しては、登録取り消しや社名公表を行う。野洲市において先駆的な「訪販登録制」条例が成立したことは、特定商取引法の「不招請勧誘規制」の議論の進展に影響を与える可能性がある。他の地方自治体が追随して同様の条例を制定する可能性もあり、注視が必要だ。


 滋賀県野洲市が6月21日、訪販事業者の登録制度を含む「野洲市くらし支えあい条例」を成立させた。16年10月1日から部分施行され、登録の受け付けを開始。17年10月1日の完全施行後は、登録事業者以外の販売が禁止される。
 野洲市内で訪問勧誘を行うにあたっては、登録が義務付けられる。登録せずに勧誘を行ったり、登録を取り消されたりした事業者については野洲市が社名公表を行うことができる。登録を求められるのは、業種に関わらず「事業者が自分の店舗以外の場所で商品やサービスについて契約の申込みを受け、又は契約する」事業者すべてだ。
 登録の申請方法は現在準備中だが、「登録にあたり厳しい審査はしない。登録を取り消されたことがある事業者や暴力団関係者でなければ登録は受け付ける」(野洲市・市民部市民生活相談課)と説明している。登録された訪販事業者の一覧はホームページで公開され、各社の電話番号などが掲載されるという。
 取り消しや社名公表以上の罰則は盛り込まれていないが、行政手続法の規定は活用する。具体的には、野洲市内で事業者による違法行為が認められた場合、消費者庁や金融庁といった管轄省庁などに対して、野洲市長が処分または行政指導を求める。その結果を、市民に公開することも、同条例では定めている。


■登録制でシール有効に

 同条例では、特商法では努力義務にとどまっている「勧誘を受ける意思の事前確認」も義務化した。契約をしない意思表示をした顧客への勧誘を行った場合、その事業者の登録を、市は取り消すことができる。野洲市では06年から、「訪問販売お断りシール」を貼った家への訪問勧誘を条例で禁止にしていたが、今後はその行為が登録取り消しの対象となる。
 訪問販売を拒否するシールは多くの自治体が制作・配布しており、シールを貼った家への訪問勧誘を禁止している自治体も少なくない。ただ、シールが貼られた住居で勧誘した事業者に対して社名公表や処分に至ったケースは極めてまれだという。不招請勧誘規制を求める関西連絡会(事務局大阪府)の事務局長を務める吉田実弁護士は、「大阪府の条例はシールを貼った家への訪問を禁じているが、違反した事業者に対する社名公表が1件も行われていない。大阪でも登録制を導入して実効性を高めればよい」と話している。


■シールは希望者のみに

 同条例の成立を受け、(公社)日本訪問販売協会(事務局東京都)は7月、同条例が実質的な営業制限にならないよう野洲市に要請を行った。
 こうした要請を受け同市は、シールを全世帯に配布するなどといった、シールの利用を推奨するキャンペーンを行わない方針を示したという。同市では、「市長の方針としても健全な訪販事業者の活動の制限は望んでおらず、シールは希望者に対する配布にとどめる」(同)と説明している。
 野洲市は今後、老人ホーム等で説明会を行い、シールの認知度をめていこうとしている。シールの希望者に対しても、市の担当者が希望者宅を訪問、説明の席を設けたうえで、シールを提供する方針だという。


(続きは、「日本流通産業新聞」8月25日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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