近年、急成長を遂げた、国内のeスポーツ市場に向けて、家電メーカーが参入の動きを活発化させている。22年7月にはソニーがゲーミング家電市場に参入、22年9月にはエレコムも参入した。ただ、ここにきて、eスポーツ市場の成長は鈍化の兆しを見せ始めている。市場の成長鈍化と、参入企業の増加を受け、ゲーミング家電を販売する企業の中には、一般ユーザーへのアプローチを強化する企業も増えてきているようだ。ゲーミングPC「ガレリア」などを展開するサードウェーブは23年9月、今後の戦略として、「ゲーミングPCのユーザー層拡張」を掲げ、新たなブランド戦略を発表した。ゲーミング家電の機能性の高さを生かし、ゲーミング以外の需要を開拓する動きが活発化している。
■ゲーミングPCを一般に
ゲーミングPCのECなどを展開するサードウェーブ(本社東京都)の23年7月期の売上高は、前期比1.5%増の765億円だった。19年7月期から3期連続で、100億円近い大幅増収を続けてきた同社だったが、23年7月期は微増収にとどまった。同社のEC売上高は非公開だが、全社売上高の3~4割を占めると思われる。
同社では中期経営計画として、24年7月期で売上高950億円、25年7月期で売上高1000億円を目標に掲げている。その軸として考えているのが、「ゲーミングPCのユーザー層の拡張」だという。新規ユーザーを獲得するため、これまでゲーミングPCとしてブランディングしてきた同社の商品を、一般層やビジネス層向けにリブランディングする方針のようだ。
同社の主力商品であるゲーミングPC「GALLERIA(ガレリア)」は、よりスペックを意識し、ゲーミングを中心としたハイエンドPCに、「raytrek(レイトレック)」は、ハイスペックを必要とするビジネスユーザー向けに、「THIRDWAVE(サードウェーブ)」は、一般的なビジネス・消費者向けにと、3種類のブランド展開をしていくとしている。
■機能性の高さで新たな需要を
2001年からゲーミングギアブランド「SteelSeries(スティールシリーズ)」を展開するSteelSeriesApS(スティールシリーズエーピーエス、本社コペンハーゲン)では、ゲーミングヘッドセットでの市場開拓を見据えているようだ。Japan&Korea Regional Directorの石井靖人氏は、「国内外のメーカーが増え、日本のヘッドセット市場は、飽和しつつある。『ゲーミング』ではなく、『ライフスタイル』といった切り口での打ち出し方も必要になってくると考えている」と話す。
同社では、「GG(ジージー)」という無料ソフトを提供している。「GG」では、ゲーム画面のキャプチャーや、エイムのトレーニングなどができるという。中でも、「Sonar(ソナー)」という、サウンド設定機能に、一般需要との親和性を感じているという。
「ソナーはゲーム内の足音や銃声といった特定の音を増幅、低減して、重要な音を聴きやすくする機能だ。ゲームとボイスチャットにそれぞれ独立したイコライザーも設定できる」(同)と話す。
ソナーではシーンごとに、最適な音域の音量を設定できる。そのため、ゲームだけでなく、ビジネスでのビデオ通話や映画鑑賞、音楽鑑賞などにも、同じ機器を使用できるという。「飽和しつつあるヘッドセット市場を、ゲーム需要だけで生き抜くのは難しい。ゲームだけでなく、あらゆるシーンで最適な音を楽しめるといった、幅広い打ち出しをすることにより、販路を広げていきたいと考えている」(同)とも話す。
前述のヘッドセットの価格は、3万~5万円程度。本格的なゲーミング家電は、高品質である一方、価格が高いのが現状だ。
アマゾンでは、
(続きは、「日本流通産業新聞」11月09日・16日 合併号で)
【ゲーミング家電EC】 機能性武器にユーザー層拡大へ/サードウェーブはリブランディング(2023年11月09日・16日 合併号)
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