ニッセンホールディングス(HD)は8月17日、大型家具からの撤退や早期退職者の募集といった経営合理化策を明らかにした。それに伴い今期(15年12月期)も純損失119億円を計上する予定で3期連続の赤字決算となる。経営合理化策は早期の黒字化を目的としたものだが、黒字化の鍵を握るのは通販事業会社であるニッセンの業績が回復するかだ。ニッセンは現在、業績回復に向けた構造改革を進めている。具体的には、(1)マーチャンダイジング(MD)の見直し(2)商品調達方法の変更(3)(カタログやインターネットなど)売り場の改善─などだ。一連の構造改革は来春にも具現化する見通し。ニッセンHDは来期、経常黒字化を予想しているが、ニッセンの構造改革による業績への影響は依然不透明さを拭いきれない。
販売計画に基づく傾斜発注に変更
MDの見直しについては今春、「価格訴求から価値訴求への転換」という方針を明らかにした。ニッセンHDの市場信行社長(ニッセンの社長を兼務)は8月18日、中間決算の説明会で「低価格帯を捨てて高価格帯に行くわけではないし、顧客を入れ替えるつもりもない」と明言した。
具体的なMDの見直し策はまず、衣料品の品ぞろえを絞り込むとともに、価格帯については従来より価格を引き上げた商品ラインを充実させる。品ぞろえの絞り込みによって、売れ筋商品と死筋商品を早期に見極めるのが狙いだ。
商品管理は、これまでのブランド別管理からカテゴリー別管理に変更。価格帯とデザインによる商品マトリクスによって、品ぞろえの最適化と全体のプライスラインを明確にする。
一例としてワイシャツのマトリクスによるとニッセンは従来、数百円台から2500円のワイシャツをラインアップし、中心となる価格帯は2000円未満だった。
これを見直し、価格帯を千円台から5000円未満に広げ、価格によってはEC限定で販売するようにする。ワイシャツのデザインも標準なシルエットだけでなく、スリムなタイプも取り入れていく。
商品調達では発注方法を変更する。これまでの発注は、売り上げ計画に基づいた平準的な発注方法だった。しかし、それによって売れ筋商品では多くの欠品が発生し、あまり売れない商品は在庫が残るという課題を抱えていた。
セブン&アイグループによる単品管理手法を用いて、販売計画に基づく傾斜発注に変更。発注精度を高めることで、売り上げの機会損失を減らすとともに、早期の在庫処分につなげていく。さらに、需要予測、発注、処分まで一貫した責任部門を設置。発注や在庫の責任を明確にした体制に変更している。
(続きは「日本流通産業新聞」8月27日号で)
【ニッセンHDの黒字化】ニッセンの業績回復が鍵/ 商品強化へてこ入れ/MD見直し、調達方法変更
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