通販各社のCRM/ロイヤル客向けの施策が多様化/オペレーターが商品提供、顧客宅訪問も

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受賞盾と通販限定商品を前に話すベル24の東氏(写真左)とカゴメの原氏

受賞盾と通販限定商品を前に話すベル24の東氏(写真左)とカゴメの原氏

 通販CRMの一環として、ロイヤル顧客の満足度向上を目指した取り組みが多様化している。カゴメはコールセンター大手のベルシステム24(本社東京)と共同で、オペレーターが自由にノベルティなどを贈ることができる制度を導入。この仕組みにより「コンタクトセンター・アワード2017」の「ストラテジー部門賞」を受賞した。カゴメはロイヤル顧客向けの売り上げが22%増となり、対象者の約6割のLTV(ライフタイムバリュー=顧客生涯価値)が向上した。トランスコスモスの日本直販事業は、顧客宅に訪問する取り組みを始めた。

 カゴメとベルシステム24は、昨秋にリックテレコム(本社東京)が開催した「コンタクトセンター・アワード2017」でロイヤル顧客向けの施策が評価され、「ストラテジー部門賞」を受賞した。
 カゴメは、メーカーとして原料調達から加工技術までの「ものづくり」を強みとする一方で、通販事業では顧客へのサービスが不十分と考えていた。
 「冬場に野菜ジュースの離脱があればポタージュを開発するなど、お客さまが退会する理由を『ものづくり』で解決しようとする傾向にあった。ただ、サービスがお粗末だと継続購入はしてもらえない」(マーケティング本部通販事業部販売企画グループ・原浩晃主任)と話す。
 一年以上継続しているロイヤル顧客を対象に「商品」「ダイレクトメール(DM)」「コールセンター」など5項目で満足度を調査したところ、「コールセンターへの満足度が最も高かった」(同)と言う。
 コールセンターをものづくりと並ぶ強みと捉え、ベルシステム24と手を組む形で、16年5月からロイヤル顧客(一年以上継続または年間6万円以上購入)向けの施策を展開している。
 ロイヤル顧客からコールセンターに電話があった際、オペレーターが自らの判断で自発的にサービスを提供できるようにした。「(誕生日や孫の入学式など)お客さまにとって喜ばしい出来事があった時や、長期にわたりご愛顧いただいている会員に対して、上限を設けずにオペレーターが自由に商品やノベルティを贈っている。お客さまのお休み期間を通常の3カ月から延長することも可能」(同)。ノベルティは、タオル、一筆箋、折り紙など約10種類を用意している。
 まだ対象人数としては少ないとするが、ロイヤル対応後6カ月間を比較すると「売上高は22%増加し、ROI(投資対効果)は5~10倍となっている。約6割のお客さまのLTVが上昇した」(同)としている。
 今後は、例えば農業体験のような、体験型プレゼントも視野に入れている。

■オペレーターのやる気喚起

 ベルシステム24はカゴメとの取り組みについて、「自分で決められる権限を与えられることでお客さまに喜んでもらいたいという意識が向上し、オペレーターの成長につながった。自発的にやるからこそお客さまに思いが伝わり、継続につながっているのでは」(CRM事業本部戦略アカウントソリューション第二事業部・東未来担当マネージャー)とみている。
 カゴメの主な顧客層は60代だが、「一時は野菜ジュースが売れなくなり、14年までは全社的に必死だった。通販限定に開発したジュース『つぶより野菜』がヒットし、顧客獲得効率も改善した。ようやくCRMに本腰を入れる余裕が生まれた」(カゴメ・原氏)。
 カゴメの16年12月期の通販売上高は94億4400万円。17年12月期は100億円を超える見込み。1月中にもブース数を105席から161席に増席する計画だ。

■イベントでファン獲得

 CRM活動の一環としたリアルイベントを活用するケースも目立ってきた。
 化粧品・健康食品ブランド「fracora(フラコラ)」で通販展開する協和(本社東京都、堀内泰司社長)はロイヤル顧客向けに、カメラマンによるスタジオ撮影会を毎月実施している。「フラコラを使ってきれいになったという喜びを実感していただきたい」(広報)とし、毎回5~6人が参加している。

(続きは、「日本流通産業新聞」1月11日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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