通販・訪販化粧品/大手2社のデータ活用進む/肌状態や生活習慣も

  • 定期購読する
  • 業界データ購入
  • デジタル版で読む
資生堂のスマホアプリはおすすめアイテムからECサイトへ遷移させる

資生堂のスマホアプリはおすすめアイテムからECサイトへ遷移させる

 化粧品販売大手2社で、ビッグデータ活用が進んでいる。国内化粧品メーカー最大手の資生堂は11月27日、同社が提供する肌分析アプリに、ECサイトとの連携機能を追加した。アプリで得られた肌分析結果に基づき、同社のECサイトで商品提案を受けられるようになった。同社としては、同アプリを通して、個人情報と結びついた形で、肌状態や生活習慣のデータを収集、マーケティングなどに生かしていくとみられる。一方、89年の肌分析サービスの開始以来1700万人分以上の肌分析データを収集してきたという、訪販化粧品のポーラも、今年の7月に、より詳細な肌分析ができるシステムを導入するなどビッグデータ活用を推進している。肌分析で得られるビッグデータを、ポーラブランド全体の商品開発に役立てているという。大手2社がビッグデータ活用の展開を加速する中、通販・訪販業界ではビッグデータを活用した戦略が中小を含め浸透していく可能性がある。


■アプリでおすすめの根拠を提示

 資生堂は9月28日、肌分析アプリ「肌パシャ」をリリースした。同アプリでは、ユーザーがスマートフォンで肌の写真を撮ったり、肌の悩みや普段の食生活を入力したりすると、ユーザーの肌状態や、肌に足りない要素を教えてくれる。資生堂はアプリのダウンロード数について公表をしていないが、リリースから2カ月間のダウンロード数は、事前に想定した3カ月分のダウンロード数の3倍に達したとしている。
 11月27日には、「肌パシャ」に、資生堂ECサイト「ワタシプラス」へと誘導する機能が追加された。「肌パシャ」の「おすすめアイテム」のボタンをタップすると、ワタシプラスの商品群の中からお薦めの商品をピックアップしたページに遷移する。
 ある中堅化粧品企業の取締役は、「通販で化粧品を探している『コスメジプシー』のような人たちは、化粧品が自分に合っているという根拠を示されると購買に至るケースが多い」と話す。肌分析アプリによるレコメンドは購買意欲の向上に大きく寄与しそうだ。「肌パシャ」のダウンロード数が伸びるにつれ、ECサイトへの新規顧客の流入数も増加することが予想される。

■広告展開での活用も視野に

 「肌パシャ」を通して、「年齢」「居住地域」「生理周期」「水分量や皮脂量などの肌状態」「肌悩み」「食生活や運動量などの生活習慣」「使用アイテム」などのユーザー情報を得ることができる。これらの情報を基に、地域・年代別の肌状態の傾向などといったクロス集計のデータを導き出すことも可能だ。
 アプリから得られるこうした情報に、ECサイトの個人情報を結びつけることにより資生堂は、より膨大なビッグデータを手にすることになる。
 ビッグデータを活用したマーケティング支援を行うPLAN―B(プランビー、本社大阪府)の担当者に聞くと、「ユーザーの端末情報も得られるとすれば、個々の顧客に応じたターゲティング広告の精度を向上させることも可能だ。情報の精度が高ければ、広告もより細分化した内容が作れる。必要な人に必要なPRが届くようになるのではないか」と推測する。
 今後顧客のビッグデータをどのように活用していくかについて同社では、「現状は未定」(資生堂ジャパン事業戦略部)としているが、ビッグデータ活用の展開加速を見据えたとみられる具体的なアクションを、同社はすでに起こしている。資生堂は11月8日、データ分析やAIに強みを持つ、米国のITベンチャー企業、ギアラン(本社マサチューセッツ州)を買収した。買収に当たっては、ギアランのAI技術を利用することによって、「お客さまと商品との出会いを変え、資生堂のブランドとお客さまとの間に深くパーソナルなつながりを生み出す」(魚谷雅彦社長)という方針も明らかにしている。

(続きは、「日本流通産業新聞」12月7日号で)

肌分析データから作るポーラの「APEX」

肌分析データから作るポーラの「APEX」

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

Page Topへ