消費者庁は11月7日、16社19品目の機能性表示食品に対して景品表示法に基づく措置命令を行った。「機能性表示食品」「16社に一斉措置命令」のインパクトは大きく、健康食品業界には動揺が広がっている。今回の件は、健食業界にどのような影響を及ぼすのか。識者や事業者からは、「機能性表示食品離れ」や「媒体社の考査の厳格化」を危ぶむ声が上がっている。
痩身効果を標ぼうする食品を徹底的にやっつけるという意思を強く示しているのではないか109640
薬事法広告研究所の稲留万希子代表は今回の一斉処分について、こう指摘する。「7月14日に消費者庁から、打ち消し表示の考え方が示され、9月29日には、ダイエット表示のいわゆる健康食品も景表法の措置命令を受けた。そして駄目押しのように、今回の機能性表示食品の措置命令。痩身効果をうたう食品は『機能性表示食品』であろうと『いわゆる健康食品』であろうと徹底的に叩いていくという強い意志を感じる」とみている。
一方、今回の処分に強い危機感を覚えたというのが、(一社)国際栄養食品協会の天ケ瀬晴信理事長だ。「テレビや新聞で大きく報道されれば、『機能性表示食品は怪しい』というイメージを一般消費者に与えることになりかねない」(天ケ瀬理事長)と話す。
健康食品業界に詳しい齋藤健一郎弁護士も、この危機感を共有しており、「一連の件は、週刊誌の格好のネタになりかねない。そうすると健食や、機能性表示食品に対する一般消費者のイメージが悪化し、健食産業がじわじわとダメージを負うことになりそうだ」と言う。
稲留代表は「特定保健用食品(トクホ)も機能性表示食品も厳しい目にさらされるここ数年の流れからすると、『それならば別に〝いわゆる健康食品〟でいいじゃないか』という風潮になってしまいかねない」とも指摘する。「そうなってしまうのは消費者庁としても不本意ではないのか」(稲留代表)とくぎを刺す。「事業者や消費者が、一定の科学的根拠を持つ、機能性やトクホから離れてしまった結果、〝いわゆる健康食品〟の枠組みの中で別の問題が顕在化するということでは何の意味もないのではないか」(同)とも話している。
ある食品メーカーの通販事業責任者であるA氏は、「機能性表示食品離れが起きれば、その後は、業界内で問題となっている〝勝手に定期購入〟のようなやんちゃなやり口に流れてしまう事業者がさらに増えてしまうのではないか」と危惧する。
稲留代表は、今回の件が「媒体社の広告考査の厳格化」につながることも懸念している。「今回の措置命令は、届け出情報の論文の内容まで踏み込んでいることが気がかり」なのだという。「媒体で広告出稿の考査を行う人が、機能性表示食品の広告表示の適正さを確認するためには、広告内容と届け出情報が正しくリンクしているかどうかを確認する必要があるということになってしまう。そうなると、機能性の根拠論文まで目を通さなければならない。考査の仕方としてはあまり現実的ではないのではないか」というのだ。「となると、機能性表示食品の広告には、商品パッケージに記載できている内容くらいしか盛り込めなくなってしまうのではないか」(同)と見通しを語る。前出のA氏も、稲留代表の意見に同調する。「ただでさえ、地方のテレビ局の広告考査が厳格化する傾向がある。健康食品業界はかなり厳しい状況に立たされてしまうのではないか」と話している。
(続きは、「日本流通産業新聞」11月16日号で)
機能性表示 16社一斉措置命令の余波/「痩身効果」標ぼうは徹底排除?/広告考査厳格化を危ぶむ声も
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