百貨店各社はそれぞれ、多様なオムニチャネル施策を打ち出している。来店促進を図るキャンペーンをネット上で展開したり、商品力を生かしてネット販売を強化したりしている。それぞれの施策の反響を高めるために、外部企業との連携にも積極的だ。各社とも、百貨店の強みである「接客力」と「商品の目利き」をネットで訴求し、顧客の取り込みを強化している。
「拡張店舗」で強み発揮
松屋は11月、ユーザーがネットで見た商品を店頭に取り寄せて購入できるO2O(オンライン・トゥ・オフライン)モール「tabモール」に参加した。店頭に並べきれない婦人靴など約2万品目をモール上で紹介し、松屋銀座店で試着、購入してもらおうとしている。
松屋の取締役で松屋銀座店の本店長を務める古屋毅彦氏は、「百貨店がいかにウェブを活用するかは長年の課題だった。当社もイベント販売や、外商と絡めたサービスなど限定的にしかECを活用できていなかった」と話す。
古屋氏は「tabモール」が掲げる「拡張店舗」という概念に共感し、参加を決めた。「売り場」をネット上に拡張することにより、顧客との接点を増やすことができるだけでなく、百貨店の強みである「接客サービス」と「商品の目利き」をより生かせると考えたのだ。
「EC専業企業のようにいかに早く商品を届けられるかという利便性で勝負するつもりはない。店頭でおもてなしをすることによって百貨店本来の強みを発揮できる」(同)と話す。
同社は、tabモールで取り寄せを依頼した顧客に対して、取り寄せ商品と同様のアイテムを勧めたり、コーディネートを提案したりする取り組みも検討しているという。「事前にお客さまが求めている商品が分かるので、さまざまな仕掛けができる。ここが腕の見せ所だ」(同)と意気込む。
さらに、取扱商品の幅が広がることにより、商品企画(MD)が強化できると期待している。「百貨店は効率を追求していくモデル。売り場効率を考えると売れ筋しか置けなくなる。『拡張店舗』で取扱商品の幅が広がれば、挑戦的なMDが展開できる」(同)と言う。
松屋は「tabモール」経由で来店した顧客の売り上げを、11月は500万円、12月は1000万円という具合に伸ばしていきたい考えだ。来年には靴以外の取扱商品も拡充する予定だという。
(続きは本紙11月27日号で)
〈百貨店〉 オムニチャネル施策が活発化/「接客力」「商品の目利き」訴求し、顧客を獲得
記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。