住宅設備を販売する訪販会社が、営業担当者のコンプライアンス順守やマナーの向上に力を注いでいる。国民生活センターによると、15年度に寄せられた住宅設備に関わる相談件数は、前年度とほぼ横ばいの6747件。勧誘を始める際に販売目的を隠すなど特商法に違反する行為や、マナーの悪さを訴える相談が少なくない。特商法に基づく行政処分を受けた住設訪販事業者は、前年度と同じ18件だった。行政処分を受ければ会社の将来に大きな影を落とすことになる。独自の取り組みを実施するだけでなく、提携先や業界団体と協力して社員教育を強化する取り組みが広がっている。
■返信率は50%以上
訪販会社が消費者宅を訪問する時は、営業機会の創出と同時に会社のコンプライアンスへの取り組みが露呈する場でもある。営業担当者は法律をしっかり守りながらも、商機を逃さないスキルが求められる。
住宅リフォームやスマートハウス商材を販売する子会社を複数傘下に持つネクステージグループ(本社東京都、佐々木洋寧社長)では、営業担当者が消費者宅を訪問した際、はがきサイズの名刺を渡す取り組みが好評だという。
名刺の裏側には「あいさつや身だしなみ」「態度や言葉使い」など、6つのアンケート項目が並ぶ。
営業担当者の当日の様子を「大満足」「満足」「普通」「やや不満」「不満」の5段階で採点してもらっている。
アンケートは、コンプライアンス業務を行う危機管理対策本部で集約。営業担当者に情報をフィードバックして、業務改善に役立てている。
消費者から「営業担当者がたばこ臭かった」という意見が寄せられた際は、「健康をテーマにした商材を販売する会社にそぐわないのではないか」(佐々木洋寧社長)との反省から、社内の禁煙運動につながった事例もある。
配布したアンケートの返信率は50%近くあり、毎月平均2500枚の返信があるという。返信者には抽選で5000円相当のギフトカードを贈呈しているため、消費者からの評判も上々だ。
太陽光発電を販売するサンティア(本社東京都、守屋敬善社長)は、初めての消費者宅を訪問する際は、営業担当者は名刺を持参するだけで商品カタログなど営業資料は持ち込まないという。
初回の訪問では、消費者に省エネ商材に関心があるかを確かめるのが目的だ。
顧客が関心を示した場合は、後日クローザーが訪問。商品や契約内容を改めて説明する仕組みになっている。
初訪問で契約まで進めると、家族に相談していないなどのトラブルに発展する。消費者が太陽光発電やリフォームを必要なのか、あえて冷静に判断するための期間を設けている。
■「仮申し込み」の設置
前出のネクステージでは消費者宅の訪問時に、会社が作成した訪問目的を記載した用紙を渡すようにしている。訪問目的を隠して行政指導を受ける企業が多いため、口頭による説明だけでは不十分と考えた。
営業担当者が法令を順守していたか確かめるため、営業担当者は消費者宅を出た後、本社に報告する義務がある。
その後、コールセンターから消費者に「サンキューコール」を発信するとともに、勧誘時に法令違反がなかったかを確認している。
コールセンターは年中無休の24時間体制。日中の電話は本社内のカスタマーセンターにつながる。
コールセンターには1日、約50件の電話が掛かってくる。アポイントの変更やアフターメンテナンスの依頼が多く、クレームにつながるような案件はほとんどないという。
(続きは、「日本流通産業新聞」7月21日号で)
住設訪販/法令順守で独自の取り組み/提携先や加盟団体と協力し教育も
記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。