【訪販・食品宅配の中間決算】業績堅調も販売員減は加速/「年収103万円の壁」の動きに注視(2024年11月28日号)

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「ヤクルト1000糖質オフ」

「ヤクルト1000糖質オフ」

 訪問販売や食品宅配企業の24年4―9月期中間決算が出そろった。コロナ需要の反動で売り上げはマイナスや横ばいが目立つ。販売員の確保が厳しさを増す中、業績が堅調な企業もある。ヤクルト本社ではコロナ禍に大ヒットした「ヤクルト1000」が踊り場を迎え、ワタミでは、冷蔵の宅配弁当に代わり、冷凍事業が売り上げをけん引する。働き手不足はさらに進み、「ヤクルトレディ」は半年前から422人減って3万2016人に、ワタミの「まごころスタッフ」は1年前より792人減って6012人となった。議論が進む「年収103万円の壁」の見直しについて企業は注目するものの、販売員の取り合いになる可能性を懸念する声もある。

■<ヤクルト本社の中間決算> 「ヤクルト1000糖質オフ」で巻き返し

 ヤクルト本社は、「ヤクルト1000」の大ヒットで増客したが、徐々に顧客の離脱が進み、新たな課題になっている。
 「ヤクルト1000」から離れたのは、「睡眠の質向上」「ストレスの軽減」という機能性に即効性を求めたが、期待した効果が得られなかった人たちだ。継続するには1本130円という価格もネックになったとみる。
 1人のヤクルトレディ(YL)が受け持つ「ヤクルト1000」の飲用客は約50件だ。離脱の原因を探るため、顧客に(1)飲用理由(2)飲用している人の属性(3)どういう効果を期待して飲んでいるのか─について聞き、10万件のアンケート結果を集めた。
 結果を見ると、約半数が満足している一方で、「味、糖質、カロリーが気になる」という声が27%にのぼった。こうしたネガティブな声に向き合い、ユーザーの継続飲用につなげる取り組みの一つとして、「ヤクルト1000糖質オフ」を開発した。首都圏で9月と10月から先行販売し、11月と12月からは全国でも価値普及活動を始めている。
 「ヤクルト1000」から離れている休眠顧客はYL1人あたり約30件と見積もる。先のアンケートからは、「ヤクルト400シリーズ」も甘さを抑えた商品を支持する人が全体の8割を超えており、糖質に対する顧客の意識はさらに高まっていると分析。「ヤクルト1000シ糖質オフ」を積極的に提案して休眠顧客の3割の再購入につなげたい考えだ。


■新規顧客が離脱顧客を上回る

 ヤクルト本社はYLの価値普及活動の強化を目的にしたトレーニングの一環として、今年4月から販売会社と連携して、朝礼やロールプレーイングなどで基本トークを徹底し、見込み客に伝えるべきポイントを整理するなど新規顧客の獲得に向けた取り組みを始めた。
 最近では、ヤクルト中央研究所(所在地東京都)の研究員を招いた全YL向けのオンラインセミナーで、「乳酸菌シロタ株の機能性について」をテーマに据えた。基本的な部分を学び直すためだ。
 これらセミナーの受講率は過去最高を更新することも多く、YLからの関心が高い。受講後に「商品の良さを分かりやすく伝えることができているか」とYLに質問すると、全体の57%が「できている」と回答したという。トレーニングの成果もあり、今中間期の新規顧客獲得は、酷暑だった8月と9月を除くと順調に推移した。コロナ禍に顧客となった人の離脱数は新規顧客獲得件数を上回っていたものの、ようやく10月に新規件数が離脱件数を上回ることができた。
 25年3月期は「ヤクルト1000」の販売目標数を1日あたり215万本に設定した。来年1月からの糖質オフ商品の本格販売で、糖質やカロリー、甘さを気にする消費者のニーズを取り込んで目標達成を目指す。


■<ワタミの中間決算> 冷凍の総菜・弁当がけん引

 ワタミの「宅食事業」の24年4―9月期の中間売上高は、

(続きは、「日本流通産業新聞」11月28日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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