【通販・訪販業界動向を分析】 成熟する業界、巧みに人・技術を活用(2024年8月8日・15日夏季特大号)

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 パリオリンピックが開幕し、日本人選手の活躍の話題が飛び交う。通販・訪販業界をスポーツ選手に例えると、両業界とも歴史を積み重ねてきた老獪な選手といえるだろう。実績は確かだが、市場全体は成熟の域に達しつつある。大きな結果を出すためには、馬術日本代表「初老ジャパン」が人馬一体となって活躍したように、人の力とテクノロジーの力を効果的に組み合わせていく必要がありそうだ。EC業界はまだ若いようだが、国内でも30年近い歴史となってきた。青年のアグレッシブなスタイルよりも、壮年の地に足の着いた巧みな戦い方が有効なようだ。通販業界・訪販業界に分けて、業界動向や市場の見通しをまとめる。通販・訪販各社には、業界動向というピッチコンディションを参考に、自身のプレースタイルを見定める参考にしてほしい。

【通販業界】クロスボーダーが鍵/先見性・実行力で荒波を越えろ

 通販・EC市場は「天気晴朗なれども波高し」といった具合か。
 市場の拡大は続くものの、市場を取り巻く環境や、足元の競争環境は厳しさを増している。
 今年も8月中には、経済産業省から23年の国内電子商取引市場規模の調査結果が発表される見通しだ。物販系のBtoC―EC市場規模は、22年が5.3%の成長率だったが、データに詳しい専門家によると23年は成長率が5%を切ると目されている。
 EC市場は鈍化傾向にあるものの、まだ成長は続いている。一方でカタログ通販は市場規模が縮小しており、各事業者は守りの取り組みに注力している。
 テレビ通販はコロナ禍に成長したものの、現在は伸び悩んでいる状況のようだ。


■北の達人はモール強化

 それぞれのチャネルで厳しい戦いが迫られる中、成長継続の鍵を握るのは「クロスボーダー」にありそうだ。
 D2CブランドでもECのみのチャネルで販促を仕掛けている企業は、近年のCPAの高騰で伸び悩んでいる。成長しているのは、ネットだけではなく、テレビや新聞などさまざまな広告を駆使している事業者だ。
 通販売上高ランキングにおいて売上高100億円以上で最も増収率の大きかったのは、美容・健康商品通販の北の達人ホールディングス(49.2%増)だった。同社は広告効率を高めるために、販促に磨きをかけるだけではなく、ECモールにも積極的に出店して、売り上げを伸ばしている。


■チャネル、国境を越える

 売上高100億円以上で増収率3位の完全栄養食を販売するベースフード(35.7%増)は、コンビニエンスストアなどリアルの販路を効果的に開拓することで、ブランドの認知を一気に高め、EC売上高も伸ばしている。販売チャネルのボーダーを超えて、強みのある商品を拡販したことで、顧客獲得に成功している。



【訪販業界】「二極分化」進む/“アフターコロナ”の実態浮き彫り

 訪販業界では、23年5月の「5類移行」から1年以上が経ち、?アフターコロナ?の実態が浮き彫りになってきている。各業態で共通して、浮かび上がってきたキーワードは「優勝劣敗」「二極分化」だ。人材獲得の可否が、多くの訪販企業の業績の浮沈を分ける状態になっている。


■伸びる会社は伸び

 訪販業界では「伸びる会社は伸び、落ちる会社は落ちる」状況となっている。
 例えば住設訪販。オンライン商談が一般化したコロナ禍を経て、現在は再び「リアル訪問が当たり前」になってきている。エネルギー価格の高騰を背景に、太陽光発電・蓄電池などへの注目度は大幅アップ。一方で、物価高は、消費者の財布のひもを固くさせる要因にもなっている。そんな中、企業によって業績の明暗がくっきり分かれている。
 明暗を分けているのは、「人材の獲得・維持」だ。売り手市場の新卒人材採用において学生が重視するのは、必ずしも給料の多寡ではない。その会社で働くことが、いかに「やりがい」「成長」につながるかを伝えることが重要なのだそうだ。採用した人材を「手放さない」ことも重要。各社、入社前のインターンシップを拡充するなど、入社前後のギャップが生じにくくしているという。


■人材獲得が業績左右

 人材獲得の成否が業績を大きく左右しているのは、宣伝講習販売も同様。コロナ禍で一時は、新規顧客の獲得や、売り上げの確保が難しくなったが、アフターコロナを迎え、客足は戻り、再び活性化しつつあるという。せっかく生まれた、成長の気運に、人材獲得難が水を差す状況になっている。
 店舗ではパートスタッフなどを交えて店舗を回す例も珍しくなくなってきているという。人材獲得難は新規出店を妨げる要因になっている。
 食品宅配業界も二極化の様相。食品宅配は、コロナ禍で業績を伸ばした業態だけに、反動による減収が生じた企業も少なくなかったという。「置き配」が一般化した結果、宅配時の販売員による追加提案がしづらくなったという事情もあるようだ。
 そんな中、高齢化が後押しする形でシニア向け食品宅配は順調だという。

(続きは、「日本流通産業新聞」8月8日・15日夏季特大号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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