ダスキンは、掃除用具やエアコンクリーニングといったサービスについて、3分以内の動画などによる販促活動を本格化させている。タブレット端末を活用して顧客に商品やサービスを紹介。同時に販売員の研修にも活用しており、4月から先行導入している加盟店では、訪問件数が2倍に増えるなど着実に成果が表れている。14年1月から本格稼働した会員制サイト「ディーデュエット」の会員数も20万人(15年9月末)を突破。メール配信などを通じて、訪販以外の会員への接点を広げている。創業50年の訪問販売とITを組み合わせることで、販売組織の進化に挑んでいる。
販売員コンシェルジュ化
ダスキンは15年3月に発表した9カ年の長期ビジョン「ONE DUSKIN」の中で、全国6万5000人の「ハーティ」と呼ばれる販売員を、消費者のニーズに対して的確な対応ができる「コンシェルジュ」に育成するという目標を掲げた。どの販売員が訪問販売しても一定のレベルで接客と応対ができることを目指す。
この目標を達成するためには、販売員のスキルアップが必須条件。販売員の提案力にばらつきをなくし、スキルの平準化も課題となる。こうした課題を解決する手段として、販売員向けにタブレット端末を活用した研修プログラムを新たに整備し、今年4月に本格運用を開始した。
現在までに1900台のタブレット端末を導入。16年3月末までに4000台のタブレット端末を販売員に導入する目標を掲げる。18年3月末には1万4000台の導入を目指す。
研修プログラムもウェブで
販売員向けの研修プログラムは、14年1月から開始した消費者やユーザーを対象にした会員制サイト「ディーデュエット」の中に盛り込んだ。
同サイト内には、販売員専用ページ「ダスキンファミリー」を設置。販売員がこのサイトにアクセスすると、研修プログラムを受講することができる。
研修コースは(1)基礎編(2)お仕事編(3)商品・サービス編(4)活動編─に分けられる。商品説明の仕方や提案方法を盛り込んだ動画、テキスト形式で商品知識を習得できるコンテンツを用意。テストも新たに盛り込んでおり、何度も繰り返し学ぶことでスキルアップが図れるようにした。
販売員には従来、数ページにわたるテキストが配布されていた。配布後のフォローはなく、どのように取り組んでいるかどうかは販売員の意識に委ねられていた。
新たな仕組みを導入することで、誰がいつログインしたのかを加盟店が管理することができるため、計画的な育成にもつながるとみる。「自宅でのセルフラーニングが期待できる」(クリーン・ケア開発本部・組織開発部・平野英司部長)と話しており、従来までの紙ベースのテキストから、来年をめどにウェブへ移行させる考えだ。
業務効率化への活用も推進
ダスキンのウェブサイト活用は、業務効率化の一環としても役立てる。販売員には、タブレット端末やスマートフォンを活用した営業スタイルの提案を推し進めており、来年度には受注管理もタブレット端末で可能にする考えだ。
販売員専用サイトには、本社が制作した商品やサービスに関する3分以内の説明動画を掲載。この動画を訪問時に玄関先で紹介し、見込み客に視覚的に訴えることで契約に結び付ける。
例えば、エアコンクリーニングの場合は、エアコンの型番を調べる必要がある。iPadに搭載されているテレビ電話機能「フェイスタイム」を使って、その場で掃除が可能かを加盟店スタッフに確認する。こうしたスピーディーな対応が契約につながるケースも出てきている。
試験的に導入した128人の販売員に対して営業成果を検証した結果、モップ以外の商品の提案件数が2倍以上に増加していることが分かった。さらに、販売員1人当たりの新規訪問件数についての検証では、「ケアサービス紹介」が前年同期比56%増、「ふとん丸洗い」が同107%増と大きく伸びた。平均顧客単価についても15年3月末と比べ15年6月末は25%アップしたとしている。
(続きは「日本流通産業新聞」10月22日号で)
〈ダスキンの訪販改革〉 動画活用で訪問販売に磨き/タブレットで販売員研修も
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