【成長ショップ物語】〈ハモンズ〉/3度の倒産危機、在庫分析で回避

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瀬川直寛社長

 ベビー服のECサイト「Babychu(べびちゅ)」を運営するハモンズ(本社大阪府、瀬川直寛社長)は、3度の倒産危機に直面した。不良在庫を抱えすぎてしまい黒字倒産の危機に陥ったこともあった。危機を乗り切るため、在庫の収益性や不良在庫発生のロジックを徹底的に分析。過去の辛酸を教訓に、在庫の収益性を可視化するシステムを開発し、現在では過去最高収益を上げるまでになった。
 13年3月、「べびちゅ」を開設した。開設当初からフェイスブック(FB)による集客に集中した。FBに広告を出稿し、ページのフォロワーを獲得。多い月には2万人近いフォロワーを獲得し、1年後にはフォロワー数を7万人にまで拡大した。
 売り上げは順調に伸び、開設半年で月商700万円を突破した。


■一掃セールで倒産回避

 順風満帆に思えた14年12月、初めての倒産危機が訪れた。
 「よく売れるので在庫を増やそうと仕入れを強化したら、いつの間にか不良在庫だらけに。資金繰りが悪化し、このままいくと15年2月の社員の給料が払えない。どうにかお金を作ろうと初めてセールを実施した」(瀬川社長)と振り返る。
 セールを行うため、商品の販売データを分析した。一概に不良在庫といっても、商品によって売れ方が異なり、滞留期間などで一概に決めることはできないと考えた。そこで目を付けたのが、「どのくらいの期間で売れているか」という”販売力”だった。
 「過去のデータから商品ごとの販売予測を行った。数千SKUあった全商品の販売力を徹夜で分析した。そのデータに基づき値引き率を決めた。朝方には商品画像をプリントアウトして値引き率を書いた紙で事務所の床が埋め尽くされた」(同)と話す。


■在庫回転率が1.6に

 不良在庫の一斉セールを実施し、1度目の倒産危機は回避できた。しかし、15年4月に2度目の倒産危機が訪れた。勘に頼って仕入れを行っていたため、再び不良在庫が積み上がってしまったのだ。
 「セールを乱発するわけにもいかない。不良在庫が発生するロジックを分析した。しかるべき数の『適正在庫』、販売力を超えた『過剰在庫』、処分が必要な『不良在庫』とステータスを分け、『過剰在庫』になった時点で小幅な割引を実施したり、メルマガ会員限定でセールを実施するなどして、『不良在庫』なることを防げるようになった」(同)と言う。
 在庫回転数は悪い月で0.7回だったが、在庫のステータスを可視化し、アラートを立てることで月1.6回転にまで改善した。


■常連・新規ともに離反

 在庫回転率が改善し、収益性が向上。順調に売り上げも伸び、16年には月商数千万円を超える規模になった。
 「顧客を増やそうと送料無料ラインを8000円から2000円に下げた。購入単価や粗利は多少下がると思ったが、それ以上に顧客数を増やせると見込んでの決断だったが、それが失敗だった。単価は下がったが顧客は増えず、さらには安売りのイメージになってしまい、常連客も離れてしまった」(同)と振り返る。
 いったん引き下げた送料無料ラインを8000円に戻すと、手軽さに引かれて入ってきた新規顧客も離れてしまった。収益性悪化と顧客減に陥り、3度目の倒産危機に陥った。
 「収益性を改善するため、商品ごとの粗利を分析。利益に貢献している商品はどれか、どういう買われ方をすると赤字になるのかなどを徹底的に洗った」(同)と話す。
 利益に貢献する商品を判別し、その商品が買われるパターンを分析。利益を生む商品が売れるように、ECサイトのレイアウトやレコメンド、メルマガでの訴求などすべてを変えた。
 利益を生む商品を効果的に訴求することで、17年8月には注文当たりの粗利が約2600円にまで改善した。粗利が悪化した1年前からは4倍近く増加したという。


■「フルカイテン」誕生

 自社の経験を基に、在庫の収益性を可視化し、商品ごとの利益貢献度などを分析できるシステム「FULLKAITEN(フルカイテン)」を開発した。
 「自社のために作ったシステムだが、自分たちのように在庫問題に悩む店舗は多いと思い、17年11月に外部提供を開始した。おかげさまで多くの引き合いをいただいている」(同)と言う。
 「フルカイテン」は在庫の現状を分析できだけでなく、セールでの値引き設定の最適化や、収益力を高めるためのセット商品開発にも役立つ。
 導入企業の中には、1カ月間で不良在庫を1000万円削減したり、目標の粗利単価の注文件数を1.4倍に増やした成功事例もあるという。

ベビー服のECサイト「Baby chu」

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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