スマートフォンアプリやソーシャルメディアの台頭で、リスティング広告など従来型広告の効果が低下しているといわれるEC業界。近年はデータ分析に基づきターゲット層に効率的にアプローチできる、さまざまな広告サービスも登場している。EC事業者に役立つ最新のネット広告配信サービスを探る。
出稿媒体を自動選定
複数のウェブサイトやソーシャルメディアなどの広告枠に対し、横断的に広告を配信できるシステム「デマンド・サイド・プラットフォーム(DSP)」が急速に広がり始めた。
DSPは複数のアドネットワークと連携して広告枠の買い付けや配信を自動で行うプラットフォ―ム。ネットユーザーの属性や行動履歴を自動的に認識し、広告主が設定した条件に合致していれば広告を自動配信する。
07年の創業以来、世界のDSP市場をけん引しているMediaMath(メディアマス)は、14年後半から日本での営業を本格的に開始した。
同社が提供しているDSPは「ターミナルワン」。扱っている広告の種類はディスプレー広告、動画広告、モバイル広告、ソーシャルメディア広告、アプリ内広告など幅広い。チャネルやデバイスを問わず横断的に広告配信できるのが特徴だ。
広告主は配信条件や予算、クリック単価などを設定してクリエーティブを入稿するだけ。広告料金はリアルタイムのオークション方式で決まる。
独自のアルゴリズムとテクノロジーでアクセス解析や広告の効果検証、ユーザーデータの解析などを行い、広告の目的に応じて最も効率的な媒体や出稿額などを抽出する。
広告主は管理画面上で出稿媒体ごとの費用対効果を一覧で確認することもでき、クリエーティブの効果検証も可能だ。どのようなメディアで、どのような広告を配信したとき、どのような成果を得られたのかが一目瞭然になるため、配信先の変更や広告費の増減を行いやすい。
店舗のデータと連携
マイクロアド(本社東京都、渡辺健太郎社長)は1月、実店舗の購買データを活用した広告配信サービスの提供を開始した。
マイクロアドが提供するDSP「MicroAdBLADE」(マイクロアドブレード)と、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)グループが保有する「Tポイント」のデータを連携した。
CCCグループが持つ5111万人分の「Tポイント」のデータを「マイクロアドブレード」上で活用。実店舗の購買データから推計した消費者の志向性データと、ウェブ上の行動データを掛け合わせて配信することで、ウェブ上の行動データだけでは実現できなかったターゲティングが可能になった。
不適切な媒体除外
DSPは広告枠を自動的に選択することから、広告主のブランド価値を下げるようなウェブサイトに広告が配信されてしまうこともある。こうした課題を解決するため、ウェブサイトに掲載された画像や文章の内容を解析し、不適切な広告枠を除外するシステムも生まれている。
ヤフージャパンは今春、ウェブサイトの画像や文章を自動で解析し、広告主のブランドを毀損するようなサイトに広告が掲載されることを防ぐ機能を、自社のDSP「Yahoo!プレミアムDSP」に導入する。
広告検証やメディア評価事業を展開するインテグラル・アド・サイエンス(本社米国ニューヨーク州)が提供する、ブランド保護ツール「BrandSafety(ブランドセーフティ)」を日本市場向けにローカライズして導入。ウェブサイトの評価体制を強化し、DSPサービスの信頼性を高める。
ヤフージャパンはこれまで、システムと人の目による審査体制をとってきた。新たな機能は目視審査と変わらない精度で判定するという。
【EC売り方研究所】〈ネット広告最新動向〉 /データで消費者を分類 高度なターゲティング可能に
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