食品宅配、ネット活用が活発化/台頭するネットスーパーに対抗

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パルシステムが提供するアプリ一つで登録が完結できるサービス

パルシステムが提供するアプリ一つで登録が完結できるサービス

食品宅配企業や生協を中心に、ネット活用の動きが活発になっている。日本生活協同組合連合会(本部東京都、浅田克己会長)では、15年3月期のネット受注額が初めて1000億円を突破。ディナーサービス・コーポレーション(本社静岡県、本田圭社長)は8月にヤフーショッピングへ出店し、ネット通販に本格参入する。大地を守る会(本社千葉県、藤田和芳社長)は、動画活用の施策が奏功してEC売り上げが2桁成長を続けている。ネットスーパーやEC企業に押され気味の宅配業界だが、ネットからの集客や利便性の向上で巻き返しを図っていく。
生協のネット受注が1000億円突破
 生協がネット受注を伸ばしている。日本生活協同組合連合会が提供する宅配事業のネット注文システム「eフレンズ」の14年度の受注金額は前期比11%増の1032億円となった。
 「eフレンズ」は、パソコンやスマホなどのネット端末から、商品の注文やレシピなどを検索や投稿ができる生協独自のシステム。00年から提供を開始し、14年度の登録組合員数は前期比11%増の208万人を超えた。
 商品ページに意見や感想を投稿できる「おすすめコメント」の利用が拡大している。14年度はコメントの総数が前年から10%増加。コメントを投稿した組合員数は前年から17%増となった。「人の感想が商品購入の参考になる」(広報)と組合員からの評価は上々だ。
 多い商品では一つの商品に200件以上のコメントが寄せられているという。

スマホで組合員登録

 組合員登録がネットで完結できる仕組みも始まっている。
 パルシステム生活協同組合連合会(本部東京都)では14年11月に、加入から初回購入までが最短で20分で完了できるアプリ「タベソダ」を開始した。全国の生協で、アプリで完結できる仕組みの運用は初めてだという。それまでは在宅している時に登録することが必要だったため、不在がちな消費者に登録のハードルを下げた。
 アプリの提供開始後、15年3月末時点の新規加入は1536件となった。紙ベースの注文からの切り替えは1845件だった。受注金額は当初目標には届かなかったものの、1人当たりの平均購入単価は1200円増の4753円となった。
 首都圏や甲信越地方にある6つの地域生協で構成する、コープネット事業連合(本部埼玉県、赤松光理事長)は14年8月に、東京・港区限定でネットで注文を受け、最短2日で届ける新たなネット宅配サービス「指定日お届けコープ」を試験的に開始。「センター型」のネットスーパーに参入した。
 生協をはじめとする食品宅配の多くは、地域によって配送日時が指定されており、EC以外で追加注文することができなかった。今回のサービスは「あくまで試験的な取り組み」(コープデリ・大井康成宅配事業部長)だが、利用状況を見ながらエリアを拡大するかどうかを判断する。
 ネット注文を通じて、シニアの見守りサービスにつなげる動きも出てきている。地域生協大手のコープこうべ(本部兵庫県)は15年4月、ネットに接続したテレビで宅配商品の注文ができるサービスを開始した。
 既存の組合員に加え、遠方に住む高齢者の家族からの利用を取り込み、安否確認にも活用している。初年度は1200軒、4500万円の売り上げを見込む。

(続きは日本ネット経済新聞 7月23日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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