ヤフーは9月12日、ファッションEC最大手のZOZO(ゾゾ)を子会社化する方針を発表した。ヤフーはゾゾの買収により、国内における物販ECの流通総額が2兆円を超える見込み。国内EC市場で先行する「楽天市場」や「Amazon.co.jp(アマゾン)」と同規模になる。特に「楽天市場」や「アマゾン」が強化するファッション分野で強みを発揮でき、出遅れていた物流体制を強化できた点が大きい。国内ECモールは3強時代に突入し、新たな競争が始まる。
ヤフーの川邊健太郎社長は9月12日の記者説明会で、「(ゾゾを買収したことで)国内ECナンバーワンが現実的に射程圏内に入ってくる」と鼻息を荒くした。
ヤフーはメインの広告事業の成長が鈍化する中、EC事業を第二の柱に育てようとしている。ソフトバンクグループを挙げて取り組むスマホ決済サービス「PayPay(ペイぺイ)」を盛り上げるためにも、EC事業の重要度は増している。
「EC取扱高で国内ナンバーワンになることが悲願。その目標を2020年代前半に達成したいとかねてから説明しているが、現実味を帯びてきた」(川邊社長)と話す。
■ファッションで優位
今回の買収は、先行する「アマゾン」や「楽天市場」に追随するための一手であることは間違いない。
アマゾンジャパンや楽天は、ファッション領域を重点領域としている。楽天は今秋から「東京ファッションウィーク」の冠スポンサーとなるが、それまで冠スポンサーだったのがアマゾンジャパンだった。
アマゾンジャパンも楽天もファッション領域では、「ゾゾタウン」をベンチマークにしていた。ヤフーが今後、ファッション領域での優位性をどう生かしていくかが見ものだ。
■物流も追随体制に
物流領域の競争を見てもゾゾの買収効果は大きい。
アマゾンジャパンは、強力な物流体制をいち早く構築したことで、配送サービスの面で他モールの優位に立った。楽天は一度の失敗にめげず、18年1月に「ワンデリバリー構想」を掲げ、「楽天市場」の物流の大半を自前化すると表明した。
ヤフーは子会社のアスクルの物流基盤に加え、年間3000億円以上の物量をさばく物流基盤も手にした。今後、アスクルやゾゾの物流を統合し、アマゾンや楽天に対抗する可能性もある。
■課題は売り場の連携
流通総額の数字や手にした資産だけを比べると、ヤフーがECモールの3強に入ったといえるが、話はそう簡単ではない。
ヤフーはECの売り場が分かれており、さらに今秋には「PayPayモール」と「PayPayフリマ」を追加する。売り場の乱立は、出店者やユーザーの混乱を招く可能性もある。
ヤフーの川邊社長は、「ヤフーとゾゾの相互送客は可能」と見ているが、簡単ではないだろう。ヤフーは各チャネルに「ペイペイ」を導入し、決済面の統一化は図る。
今後、売り場の連携や統一化をどのように図っていくかにも注目したい。
【ヤフーがZOZO買収】 ECモールは3強時代へ/主戦場の”ファッション”で優位、後発の物流に弾み
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