消費者委員会は8月1日、「食品表示部会」を開催し、「食品表示の全体像に関する報告書案」を提示した。ウェブを活用した食品表示について議論を重ねてきたが、義務化は見送られる公算になった。報告書案では、今後、食品表示に関する調査・結果を踏まえた段階的取り組みにより、法改正も検討していくと結論付けた。
同部会では、「ウェブでの食品表示の充実、及び義務化」を中心に議論が進められてきた。委員からは反対意見が多く、ウェブ表示の義務化は時期尚早と判断された。ウェブ上で一括表示を行うのではなく現行の本体表示の内容を充実させるべきといった意見が大勢を占めた。
樋口一清(法政大学客員教授)部会長代理は、「ウェブで正確な情報を届けても、高齢者などの消費者が理解し、活用できるのか」と消費者の「ぜい弱性」を指摘した。訪日外国人や高齢者、視覚障害がある消費者などを「継続的ぜい弱性」があるとし、さらに市場の特徴や性質などの要因により適切な判断ができない場合は「一時的ぜい弱性」にあたるとして、「ぜい弱性」の定義も考える必要があるとしている。
中小企業がどこまで対応できるかという点も課題にあげられた。委員からは、「ウェブを活用しないと取り残されたり、事業が成り立たなくなる事業者が出てくる可能性もある」など、多くの課題が見えてきた。
今後、広告や食品表示の現状を把握し、分りやすい情報提供についての参考事例を収集し、第3段階までの取り組みを行う。(図1参照)第2段階までの取り組みの実施状況を見て、第3段階では法改正も視野に入れる。
今後、次回の消費者委員会本会議で、部会での議論の内容と報告書案を報告する方針。正式な報告書は本会議後に提示され、必要であれば各省庁にも報告する。
〈消費者委員会 食品表示部会〉 ウェブ義務化見送りに/段階的取り組みで法改正も視野
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