【千原弁護士の法律Q&A】220 「裁判実務」の状況から1億円はあり得ない

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”特商法改正で罰金1億円になると聞いたが…。”

(質問)
 私は、訪問販売の会社を経営していますが、特商法の改正によって、罰金額が1億円になると聞きました。こんな罰金があるのなら、もう会社経営は無理だと思います。訪問販売を止めろということでしょうか。また、行政処分を受けた場合、新しい会社を作って営業することも禁止されると聞きました。そうだとすると、万が一の場合に備え、別の会社を用意しておいて、処分を受けたら、そちらに移行できるよう準備をしておく必要があると思いますが、そちらも禁止されるのでしょうか。     (訪販会社社長)


(回答)
 特商法の改正については、ご質問のとおりで、2017年12月頃より(正式な施行日はこれから決まります)、(1)不実告知等により刑事罰を受けるときの法人への罰金額が、現行の300万円から1億円に引き上げられる(2)「業務禁止命令制度」が創設されて、業務停止命令を受けた会社の役員などが、新たな別の法人で、同種の事業(訪問販売であれば訪問販売)を行うことが禁止されます。
 まず(1)ですが、実務上は1億円の罰金は、ほぼあり得ないと思います。現行の300万円の罰金も、私が知る限り、科されたのを見たことがありません。
 著作権法や、商標法では、相当以前から1億円の罰金刑が規定されていますが、実際に、1億円の罰金になることはまずありません。
 刑事事件の罰金は、裁判所が慎重な審理の上で決めます。その場合、1億円の罰金に相当すると考えるのは、その案件で1億円以上の被害が出ているのが基本的な前提になると思います。
 そして、裁判の中で、検察庁が「1億円以上の被害を、証拠を出して立証すること」が必要となります。
 そのような事はマンパワー上などから、ほぼ不可能です。たとえば、多くの人が被害に遭った詐欺事件でも、検察庁は、確実に立証できる一部の詐欺だけを立件します。


(続きは、「日本流通産業新聞」9月15日・22日 合併号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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