【千原弁護士の法律Q&A】▼420▲ 8日経過した契約のクーリング・オフは可能か(2024年12月12日・19日合併号)

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<質問>



 訪問販売会社を経営しています。太陽光設備の販売・設置のある案件についてご相談したいと思います。ある月の10日に契約し、同日、契約書面もお渡ししました。翌11日に、改めて現地調査を行ったところ、当初の発電容量よりも多く設置できることが判明し、お客さまに相談したところ、多くして欲しいという要望でした。これに伴い契約金額も約50万円増額することになり、お客さまにも納得をいただき、工事に取りかかることにしました(なお、変更内容についての書面交付は行っていません)。ところがその月の20日になり、お客さまからクーリング・オフの申し出がありました。既に契約日から8日を経過しており、お断りしたところ、消費生活センターが入り、クーリング・オフが可能であると主張しています。いずれにせよ解約・返金に応じる予定ですが、センターの主張は正しいのでしょうか。また、当社がいったんクーリング・オフを断った行為は「クーリング・オフ妨害だ」と言われ、この点も心配です。その他、本件に関するアドバイスをいただければと思います。(太陽光発電訪販会社社長)

<回答> 契約書面を交付していない場合は可能



 本件の場合、契約の内容、代金額が変わっているので、法的な評価としては、10日の当初の契約は合意にて解約され、11日に新たな契約が締結されたという法律関係にあると思います。
 そうすると、貴社としては、変更された契約内容で合意された11日の時点において、改めて契約書面を交付し、その時点からのクーリング・オフ期間のスタートとなると思います。
 貴社は11日の変更後の契約書面を交付しておらず、クーリング・オフ期間は未だカウントされず、お客さまはいわゆる「永久クーリング・オフ」が主張できる状態です。
 以上から、消費生活センターの主張は正しいと思います。
 契約内容の変更があった場合は、その時点で改めて変更後の内容で契約書面を交付し、新たな交付時からクーリング・オフ期間がカウントされる運用が正しいと思います。

(続きは、「日本流通産業新聞 12月12日・19日合併号で)

<プロフィール>
 1961年東京生まれ。85年司法試験合格。86年早稲田大学法学部卒業。88年に弁護士登録して、さくら共同法律事務所に入所し、94年より経営弁護士。第二東京弁護士会所属。現在、約170社(うちネットワークビジネス企業約90社)の企業・団体の顧問弁護士を務める。会社法などの一般的な法分野に加え、特定商取引法・割賦販売法・景品等表示法・知的財産法を専門分野とし、業界団体である全国直販流通協会の顧問を務める。著書に「Q&A連鎖販売取引の法律実務」(中央経済社)などがある。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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