【ニュースの深層】□□141〈業界関係者に聞く、「きなり」措置命令の余波〉 「措置命令は今後もある」(2023年7月6日号)

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成・眞海弁護士

成・眞海弁護士

 消費者庁が、さくらフォレストが販売する機能性表示食品2製品に対して行った措置命令について、業界関係者からは、さまざまな声が上がっている。「消費者庁のこのやり方は今後も続くだろう。同様のケースで、措置命令があるかもしれない」と話す専門家もいる。


■「根拠なし」の詳細を

 景表法に詳しい、東京神谷町綜合法律事務所の成・眞海弁護士からは、「『オリーブ由来ヒドロキシチロソール』については、何の説明もされていないに等しい。試験結果の評価の問題だとしているが、公表されている届け出資料を見ても、何も分からない。判断理由を何も示さないのは、行政の説明責任の放棄ではないか」といった声も上がっている。
 消費者庁は、「モノグルコシルヘスペリジン」について、「機能性の根拠が合理的でない」とする根拠として、「減塩しょうゆとの併用」を指摘している。
 「比較対象となっているプラセボ群も、減塩しょうゆを併用している。それで有意差が生じていたとしても、なぜ成分単体での機能性の根拠となり得ないのか、消費者庁が明らかにしないのは極めて問題だ」(成弁護士)ともしている。
 消費者庁が、機能性の根拠に合理性がないと判断したことの理由を明らかにしなかったことについて、別の業界関係者は、「業界団体を通じて消費者庁に声を上げても良いのではないか」と話す。
 「機能性表示食品として一旦は受理したものに対して、後から措置命令を行うのであれば、『どうして届け出の時にチェックしなかったのか』と思うのが当然の疑問だ。業界団体や学界から、『機能性を否定した根拠を示せ』と声を上げてもいいのではないか」(関係者)とも話している。


■SRのずさんさへの指摘も

 一方で、業界内には、「そもそも背景には、事業者の機能性表示食品の届け出がずさんになっていることがあるのでは」と指摘する声もある。
 機能性表示食品制度に詳しい、リーガルエックスの関山翔太代表取締役によると、「現状の機能性表示食品の届け出の制度では、査読論文一報以上で届け出が可能となっている。相対的な影響力の低い『ハゲタカジャーナル』に投稿した査読論文でも、届け出ができてしまう。一報のみだと、『本当に機能性表示の通りになるのか』という観点で、根拠が十分とは言い難い」としている。
 さくらフォレストによると、「きなり」両製品の「DHA・EPA」に関する論文の中で、「きなり」の配合量で有効性を認めていたのは一報だけだったとしている。
 消費者庁は、機能性表示食品の届け出ガイドラインを改定する予定であることを明らかにしている。健康食品に詳しい専門家からは「ガイドライン改定に向けた、地ならしのための、見せしめ的な処分では」と指摘する声も聞かれる。
 他の関係者は、「ずさんなSRは、『DHA・EPA』や『モノグルコシルヘスペリジン』以外にも、たくさんあるだろう。その中でも、さくらフォレストが刺されたのは、日ごろの広告表示などがきっかけで、措置命令の”ブラックリスト”に載っていたからではないか。見せしめにされたといってもいいだろう」(業界関係者)とも話す。

リーガルエックス・関山翔太代表取締役

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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