【千原弁護士の法律Q&A】▼198▲ NB事業で特に注意すべきこととは?

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千原弁護士

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〈質問〉

 千原先生は、多くのNB会社の顧問をされているとうかがっています。行政の対応なども、いろいろとご経験がおありだと思います。現在、ネットワークビジネス(NB)会社において、特に注意しなければならないことを、ご教授いただければと思います。よろしくお願いします。(健康食品NB会社社長)

〈回答〉 「若年層対策」「SNS対策」が2大キーワード

 NB業界について、ちょうど私も皆様にお伝えしたいことがありましたので、タイムリーな質問をいただき、ありがとうございます。先日、私が顧問契約をいただいているNB会社を数えたところ、ちょうど40社となっていることがわかりました。私が、この業界に関わるようになってから約15年が経ちます。一定の規模以上のNB会社においては、顧問弁護士は、どうしても必要な存在になってきていると思います。
 さて、ご質問の件ですが、ズバリ「若年層対策」「SNS対策」が、2大キーワードだと思います。お読みになられた方も多いと思いますが、今年7月の日経新聞に、一つの面をほぼ全部使って「マルチの相談 20代突出」「SNS慣れで被害拡大」という見出しで、特集記事が組まれていました。
 消費者庁が近年、若者に広がる連鎖販売取引の問題点を指摘していることは、皆さんもご存じだと思います。そのような流れで、大手経済紙が特集を組むというのは、それだけ社会的に被害意識、問題意識が広がっているということでしょう。
 行政処分は、「一罰百戒」的に行われますので、今後は、若年層によるSNS勧誘の問題を指摘しての業務停止処分が起きる可能性は十分にあると考えられます。
 さて、これらの対策としては、以下のとおりだと思います。
1 「未成年」や「学生」を入会させないことは、当然ですが、25歳未満は、やはり若年層と捉えて、特別の配慮が必要だと思います。
 (1)堅く行くのであれば、入会自体を規制する選択肢は十分にあります。また、(2)購入できる金額について、一定の制限を設けるという次善の策もあると思います。さらに、(3)入会者の年齢確認や学生かどうかの調査をきちんと行う(年齢詐称等の例も多いと聞いています)のも重要だと思います。
 以上は一例ですので、貴社でもよく検討して、若年層についての対策、規約を設けることをご検討下さい。
2 また、「SNS」ですが、特定商取引法においては、SNSを利用した勧誘は本来、本人からの請求、承諾がない限り行うことができません。
 リクルートの勧誘、広告を行うためには、特定商取引法に従った法定記載事項の表示が必要です。
 特定商取引法に従って、SNSで勧誘を行うことは非常にハードルが高く、今回、新聞に掲載されたような、若年層同士のSNS利用の勧誘は、すでにそれ自体が違法だと思います。
 そこで、SNS利用によるリクルートを禁止する規則を必ず作り、また、会員(特に若手)に周知、徹底することです。
 以上2点は、今後に渡っての要注意点となりますので、現在のNB会社において、十分な対策が求められると思います。


〈プロフィール〉
 1961年東京生まれ。85年司法試験合格。86年早稲田大学法学部卒業。88年に弁護士登録して、さくら共同法律事務所に入所し、94年より経営弁護士。現在、130を超える企業・団体の顧問弁護士を務める。会社法などの一般的な法分野に加え、特定商取引法・割賦販売法・景品等表示法・知的財産法を専門分野とし、また、数多くの大規模企業再生・倒産事件を手掛けてきた。業界団体である全国直販流通協会の顧問を務める。著書に「こんなにおもしろい弁護士の仕事」Part1~2(中央経済社)などがある。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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