【千原弁護士の法律Q&A】▼380▲ 「空気が読めない」社員の解雇リスクは?(2023年4月20日号)

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<質問>

 イベントの企画会社ですが、問題社員Aの解雇についてご相談します。Aはいわゆる「空気が読めない」タイプで、イベント前で皆が必死に仕事をしている時期に、遅刻をする、平気で休みを取るなどします。また謝罪の態度もなく、注意をすると反抗的な態度で口答えをします。仕事も雑でミスも多く、社員全員のストレスで、当社社長からは、「すぐにクビにしてしまえ」と厳命を受けています。社長によると、これまでも「そういう社員は皆クビにしてきた」とのことです。リスクがあると思いますが、いかがでしょうか。(イベント企画会社人事担当者)

<回答> 解雇ではなく退職勧奨を優先

 結論として、Aの解雇は大きなリスクを伴います。これまで問題が無かったとしたら、たまたまラッキーだっただけです。まず日本において法的に解雇が認められるハードルは非常に高く、Aは確かに問題社員ですが、これまで長年にわたり、Aに対して繰り返し注意・指導をしていた(客観的にそのような記録を残していることが前提です)にもかかわらず、全く改善がなされないといった「特段の事情」がない限り(その場合でも解雇するかは弁護士に相談して慎重に検討すべきです)、この程度で法的に解雇が有効とされることはまずあり得ないです。
 そして、Aが解雇無効という形で訴訟を提起した場合、途中で和解が成立しない限り、貴社は敗訴し、Aの労働者としての地位は認められ、貴社は、Aを改めて従業員として受け入れなければなりません。
 かつ、当該期間の未払報酬(たとえば最高裁での敗訴確定まで4年であれば、4年分)の概ね60%(これはAが別法人で勤務していた場合です。裁判期間中、Aが全く職に就かずに待機をしていた場合は理論的には100%)については、Aが貴社の業務を全く行っていなくても、貴社の負担となり、(年利3パーセントの遅延損害金と共に)Aに支払う必要があります。これらは「バックペイ」と呼ばれ、解雇の大きなリスクです。

(続きは、「日本流通産業新聞」4月20日号で)

<プロフィール>
 1961年東京生まれ。85年司法試験合格。86年早稲田大学法学部卒業。88年に弁護士登録して、さくら共同法律事務所に入所し、94年より経営弁護士。第二東京弁護士会所属。現在、約170社(うちネットワークビジネス企業約90社)の企業・団体の顧問弁護士を務める。会社法などの一般的な法分野に加え、特定商取引法・割賦販売法・景品等表示法・知的財産法を専門分野とし、業界団体である全国直販流通協会の顧問を務める。著書に「Q&A連鎖販売取引の法律実務」(中央経済社)などがある。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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