【千原弁護士の法律Q&A】▼368▲ 社宅賃料の給与天引きは問題ないか?(2022年10月20日号)

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【質問】

 訪問販売会社ですが、福利厚生対策として、社員のマンションを社宅契約にし、(1)半額は会社が負担し、残りは社員負担として、賃料を給与より天引きする形を考えています。また、(2)会社の賃料負担は、社員が、マンションの賃借契約後2年間は会社に在籍することを条件とし、万が一、この期間中に退職した場合は、会社負担分を返還してもらう形も考えています。これらについて問題がないか教えてください。(訪販会社社長)

【回答】 「賃金全額払いの原則」で天引きは禁止

 まず、(1)ですが、労基法24条1項に「賃金全額払いの原則」の定めがあります。これは、天引きを基本的に禁止し、賃金は全額支払わなければならないという原則です。
 例えば、労働者が会社の金を紛失したとしても、労働者の同意なく給料から天引きすることはできません。そして、会社が労働者の同意なしに賃金から控除できるのは、「健康保険料」「介護保険料」「厚生年金保険料」「雇用保険料」「所得税」「住民税」等とされています。

 それ以外の、貴社のプランの「家賃」、あるいは「親睦会費」「組合費」などを賃金から控除するためには、(1)控除することについて労働者の同意を得た上で(書面によるのが適切です)(2)会社と従業員の代表との間で給与控除に関する「労使協定」を結ぶ─必要があります。

(続きは、「日本流通産業新聞」10月20日号で)

〈プロフィール〉
 1961年東京生まれ。85年司法試験合格。86年早稲田大学法学部卒業。88年に弁護士登録して、さくら共同法律事務所に入所し、94年より経営弁護士。第二東京弁護士会所属。現在、約170社(うちネットワークビジネス企業約90社)の企業・団体の顧問弁護士を務める。会社法などの一般的な法分野に加え、特定商取引法・割賦販売法・景品等表示法・知的財産法を専門分野とし、業界団体である全国直販流通協会の顧問を務める。著書に「Q&A連鎖販売取引の法律実務」(中央経済社)などがある。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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