【千原弁護士の法律Q&A】▼357▲ 社員の背任横領対策について教えてほしい(2022年5月12日号)

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〈質問〉

 訪問販売企業を経営しています。当社の従業員がお客さまから勝手に集金して、そのお金を横領していたことが判明しました。判明しただけでも数百万円規模であり、問い詰めようとしたところ、退職届を出して、出社しなくなってしまいました。他の社員へのけじめも含めて、横領分の回収とは別に、刑務所に行ってほしいと考えています。どのような方法が考えられますか。(訪販会社社長)

〈回答〉 刑事告訴は「幻想」 横領金の取り戻しを優先すべき

 私が多くの企業の顧問業務を行う中で、従業員の横領、背任の相談は、年4~5件は必ずあるという状況です。

 皆さんに一つ「大きな誤解」があります。マスコミではよく、横領した従業員が逮捕された報道がありますから、ご相談いただいたような犯罪行為があれば、すぐに警察が動いて正義を実現してくれると思いがちですが、それは「幻想」です。

 逮捕された報道をよく見てもらうと、公務員のような特別な立場の人が犯人であるケースや、横領金額が大きい(告訴相談の際に担当の刑事から「間違いなく証明できる被害額」が1000万円というのが最低限の基準という説明を受けたことがあります)ケース、被害会社が有名企業であるケース、事件にニュースバリューがあるケースなどが多いと思います。報道されるのは、特別の事情があるケースが大半なのです。

 一般的な企業での横領、背任事案で、私はこれまで何度も刑事告訴を経験しましたが、最終的に警察が動いて、逮捕に至るケースは1割以下という印象です。これは私の腕が悪いわけではなく、ほとんどの弁護士の印象だと思います。

(続きは、「日本流通産業新聞」」5月12日号で)

〈プロフィール〉
 1961年東京生まれ。85年司法試験合格。86年早稲田大学法学部卒業。88年に弁護士登録して、さくら共同法律事務所に入所し、94年より経営弁護士。第二東京弁護士会所属。現在、約170社(うちネットワークビジネス企業約90社)の企業・団体の顧問弁護士を務める。会社法などの一般的な法分野に加え、特定商取引法・割賦販売法・景品等表示法・知的財産法を専門分野とし、業界団体である全国直販流通協会の顧問を務める。著書に「Q&A連鎖販売取引の法律実務」(中央経済社)などがある。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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