【千原弁護士の法律Q&A】▼196▲ 行政書士を通じ苦情が来たが…。

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千葉弁護士

千葉弁護士

〈Q〉

 当社の販売する化粧品で健康被害が出たとして、お客さまが依頼した行政書士から、書面が届きました。書面は、返金だけでなく約50万円もの損害金まで請求する内容になっていました。当社の方で、扱いを決めかねていたところ、その行政書士から、毎日のように電話がかかってくるようになりました。「すぐに要求に応じないと、消費生活センターや警察に訴えて、大変なことになる」などと、脅しまがいの要求をしてきます。そもそも、行政書士が、そのような交渉をしてはいけないという話を、人から聞いたことがあったような気がしますが、いかがでしょうか。また、その行政書士に、その点を指摘したところ、さらにすごい剣幕で、まったく収まりません。どうしたら良いでしょうか。ただ、問題がこじれて、警察や消費生活センターなどともめるのも避けたいと思っています。(化粧品訪販会社社長)

〈A〉 「交渉業務」は違法 無視しても問題なし

 ご理解のとおりで、行政書士は、貴社の今回の案件のような「交渉業務」を行うことはできません。「弁護士法」によって、弁護士(一定の要件のもとで司法書士)だけが、今回のような交渉を行うことが認められており、その行政書士の行動は、はっきりと違法です。
 国民生活センターも、このような「行政書士による被害」が多いとして、2015年5月14日に「アダルトサイトとの解約交渉を行政書士はできません!」として、ホームページで、消費者に注意喚起をしています。
 その中では「行政書士が返金請求や解約交渉等を行うことは、弁護士法に違反している可能性が高く、行政書士に解約交渉等を行うことは認められていません」とはっきり書かれています。まずは、こちらをチェックしてみてください。
 以上により、アダルトサイトの解約だけではなく、貴社に対する返金や賠償の交渉も、もちろん行政書士が取り扱うことはできません。貴社としては、行政書士を「完全に無視して」、お客さまと直接、やり取りを行っていただいて何の問題もありません。
 さらに、行政書士を排除する一般的な方法としては、文書で(できれば内容証明郵便が望ましいです)、お客さまと行政書士の両方に対して、「貴職は、弁護士法によって交渉を行うことが認められていません。よって、直接、お客さまと交渉します。今後、行政書士の連絡には一切応じません」と連絡をすることだと思います。
 さらに、それでも引き下がらない場合ですが、弁護士法違反を扱うのは警察なので、警察に届け出る方法があります。
 ただ、警察の場合、この種の「一般的ではない犯罪」の扱いには消極的です。そこで、その行政書士が登録をしている都道府県の管轄の部署、もしくは、都道府県の行政書士会に、苦情を申し立てて、懲戒処分を要求する方法が効果的だと思います。
 いずれにせよ、行政書士の方が違法なので、貴社としては、堂々と行政書士との交渉を無視してもらって結構です。これによって、貴社が警察や消費生活センターに問題視されることはありません。


〈プロフィール〉
 1961年東京生まれ。85年司法試験合格。86年早稲田大学法学部卒業。88年に弁護士登録して、さくら共同法律事務所に入所し、94年より経営弁護士。現在、130を超える企業・団体の顧問弁護士を務める。会社法などの一般的な法分野に加え、特定商取引法・割賦販売法・景品等表示法・知的財産法を専門分野とし、また、数多くの大規模企業再生・倒産事件を手がけてきた。業界団体である全国直販流通協会の顧問を務める。著書に「こんなにおもしろい弁護士の仕事」Part1~2(中央経済社)などがある。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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