【千原弁護士の法律Q&A】▼353▲ 賃貸借契約書のチェックポイントは? (2022年3月17日号)

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〈質問〉

 私は全国に支社がある物販会社の法務担当です。新規に契約するオフィスや倉庫などの賃貸借契約書が毎月のように上がってきますが、どのようなポイントをメインにチェックをしたら良いでしょうか。弁護士が特にチェックする条項を教えてください。(物販会社法務担当者)

〈回答〉 最もトラブルが多いのは「原状回復」

 私も顧問会社からの賃貸借契約書を日常的にチェックします。「賃借人の立場」からよく確認するのは以下のポイントです。

 まず、(1)「定期借家」契約か「普通借家」契約かは、とても重要です。
 定期借家は、契約期間が満了すれば、貴社側でどれだけ利用したくても、法律上、契約の更新はできません。なお、再契約はできますが、賃貸人が了解した場合に限られます。再契約をするための条件として賃料の大幅値上げを要求され、受け入れられなければ出てください、ということもよくあります。
 普通借家はそのような事はなく賃借人に有利です。

 (2)続いて、「更新料」と「礼金」です。礼金制度は消滅しつつあり、更新料も取られないことが多くなっています。これらは契約書ドラフト段階で記載されていても「ダメ元」のつもりが多く、交渉すればカットされるケースが多いです。

 (3)さらに「利用目的」です。単に「事務所」とだけ書いてある場合に、たとえばお客さま向けのサロン的な使い方をすると、契約違反とされるリスクがあります。利用目的は、なるべく具体的に、詳細に記載することがリスクヘッジにつながります。

 (4)やや細かいですが、賃借人側からの中途解約や、更新しない場合の事前申告期間も重要です(これは普通借家契約のケースです)。賃借人側からの中途解約の申し出については通常6カ月前までに行うことが条件とされている場合が多いですが、契約期間中の中途解約が認められない形もたまにあります(もしくは最初の2~3年以内の解約については違約金が請求される条項もあります)。

(続きは、「日本流通産業新聞」3月17日号で)

〈プロフィール〉
 1961年東京生まれ。85年司法試験合格。86年早稲田大学法学部卒業。88年に弁護士登録して、さくら共同法律事務所に入所し、94年より経営弁護士。第二東京弁護士会所属。現在、約170社(うちネットワークビジネス企業約90社)の企業・団体の顧問弁護士を務める。会社法などの一般的な法分野に加え、特定商取引法・割賦販売法・景品等表示法・知的財産法を専門分野とし、業界団体である全国直販流通協会の顧問を務める。著書に「Q&A連鎖販売取引の法律実務」(中央経済社)などがある。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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