【千原弁護士の法律Q&A】▼351▲ 社内の不良人材を整理したいのだが。 (2022年2月10日号)

  • 定期購読する
  • 業界データ購入
  • デジタル版で読む

〈質問〉

 商品販売会社を経営しています。収益力をさらに向上させるべく、社内の不良人材を整理したいと考えています。具体的に整理を考えているのは、古参の社員Aです。Aには、多額の給与を支払っていますが、それに見合うパフォーマンスがありません。また2年目の社員Bも整理の対象にする考えです。Bの場合、能力は並なのですが、指導や注意に反抗的な態度を取ることが多く、社内の空気を悪くしています。この二人を解雇するのですが、懲戒解雇にするほどの理由はありません。今年度は当社の営業が不振だったため、このタイミングで、これを理由に解雇を行う予定です。友人の経営者の話を聞いたのですが、万一、訴訟になっても最終的になにがしかの金銭を支払えば解決するとのことでした。一方、「それでは楽観的すぎるので、弁護士に相談した方が良い」という声も社内にはあり、相談することにしました。(商品販売会社社長)

〈回答〉 「お金を払えば良い」は楽観的すぎる

 結論として申し上げると、楽観的すぎる方針だと思います。

 まず、会社の業績不振を理由とする解雇は「整理解雇」と言われますが、ただ業績が悪いから解雇が認められるというものではありません。
 厚生労働省のホームページでも説明されていますが、法的に有効となるためには、(1)人員削減の必要性(人員削減措置の実施が不況、経営不振などによる企業経営上の十分な必要性に基づいていること)(2)解雇回避の努力(配置転換、希望退職者の募集など、他の手段による解雇回避のための努力)(3)人選の合理性(整理解雇の対象者を決める基準が客観的、合理的で、その運用も公正)(4)解雇手続の妥当性(労働組合または労働者に対して、解雇の必要性とその時期、規模・方法について納得を得るための説明)─が必要とされます。
 裁判で争いになった場合は、上記四つの要素を総合的に勘案して、当該解雇の有効性が厳密に判断されるので、勝訴できる例はむしろまれです。

(続きは、「日本流通産業新聞」2月10日号で)

〈プロフィール〉
 1961年東京生まれ。85年司法試験合格。86年早稲田大学法学部卒業。88年に弁護士登録して、さくら共同法律事務所に入所し、94年より経営弁護士。第二東京弁護士会所属。現在、約170社(うちネットワークビジネス企業約90社)の企業・団体の顧問弁護士を務める。会社法などの一般的な法分野に加え、特定商取引法・割賦販売法・景品等表示法・知的財産法を専門分野とし、業界団体である全国直販流通協会の顧問を務める。著書に「Q&A連鎖販売取引の法律実務」(中央経済社)などがある。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

千原弁護士の法律Q&A 連載記事
List

Page Topへ