【千原弁護士の法律Q&A】▼347▲ クーリング・オフ期間過ぎてのキャンセル要求への対応は?(2021年12月2日号)

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〈質問〉

 当社は、女性向け補整下着のサロン販売を行っています。特定商取引法の訪問販売のコンプライアンスを守っています。今回、クーリング・オフ期間をとっくに経過したお客さまから、しかも使用済みの商品について、キャンセルする旨の通知が来ました。販売方法に問題があった(販売員が無理矢理に販売した等)ためとしています。しかし、通知書に記載された内容は事実無根です。実際にはお客さまは喜んで商品を購入されていました。本人は納得して買ったのですが、夫に内緒で買ったことを後から責められたことが、キャンセルの原因になったようです。当社としては、キャンセルを拒否したいと思っています。ただ、お買い上げに当たって、カードを利用されており、カード会社からは、当社の責任で早期に解決するように、強く求められています。どのような考え方で対応すべきですか。(補整下着サロン販売会社社長)

〈回答〉 現金購入とカード決済で異なる対応

 ご質問のような、クーリング・オフ期間経過後の消費者側からの不当なキャンセル要求については、応じるべき法的な理由はありません。
 しかし、事実上、カードやクレジット利用のケースと、現金購入のケースとは、全く解決のためのアプローチが異なります。

 まず、現金購入のケースで全額を支払い済みの場合は、不当な要求については、事実無根であることを指摘してお断りすることが可能だと思います。
 その場合、お客さまとしては、【イ】訴訟を提起するか、【ロ】消費生活センターに相談するか、になると思います。
 ただ、【イ】については、仮に弁護士に相談しても、明確な根拠や証拠がない状況での訴訟提起は、普通の弁護士であれば難色を示すと思います。
 【ロ】についても、お客さまの言い分に理由がなければ、消費生活センターに対しても要求を拒絶することは可能でしょう。また、譲歩してキャンセルに応じる場合であっても、たとえば未使用品のみの返品に応じるなど、貴社として納得できる範囲での和解解決をすることも可能だと思います。

 これに対して、カード利用の場合は、まずはカード会社の意向を確認しなければなりません。

(続きは、「日本流通産業新聞」12月2日号で)

〈プロフィール〉
 1961年東京生まれ。85年司法試験合格。86年早稲田大学法学部卒業。88年に弁護士登録して、さくら共同法律事務所に入所し、94年より経営弁護士。第二東京弁護士会所属。現在、約170社(うちネットワークビジネス企業約90社)の企業・団体の顧問弁護士を務める。会社法などの一般的な法分野に加え、特定商取引法・割賦販売法・景品等表示法・知的財産法を専門分野とし、業界団体である全国直販流通協会の顧問を務める。著書に「Q&A連鎖販売取引の法律実務」(中央経済社)などがある。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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