【千原弁護士の法律Q&A】▼194▲ 商品に発火事故の可能性も。どのような行動が要求されるのか?

  • 定期購読する
  • 業界データ購入
  • デジタル版で読む
千葉弁護士

千葉弁護士

〈質問〉

 当社が販売している美容関連商品(電動式)について、一部、発火する可能性があると、卸売業者から指摘がありました。幸い事故はまだ起きていませんが、消費者庁かどこかに届け出なければならないような話を聴いたことがあります。当社としては、どのような行動を取ることが要求されるのでしょうか。また、報告した場合は公表されるのでしょうか。(美容関連商品通販会社)

〈回答〉 事故後、10日以内の報告義務が発生する

 「消費者庁への届出」については「消費生活用製品安全法」という法律があります。この法律は、重大製品事故が生じた場合、メーカーや輸入業者に対して当該事故を知った日を含む10日以内に国(消費者庁)への報告義務を課しています(35条)。
 同法でいう「製品事故」は、
(1)消費者の生命又は身体に対する危害が発生した事故
(2)製品が滅失又は毀損した事故であって消費者の生命又は身体に危害が発生するおそれがあるもの
 をいい、そのうち「重大製品事故」とは、
製品事故のうち、死亡、重傷病、火災などの重大な結果が生じたもの
とされています。
 本件は、(2)の製品事故に該当するものだと思います。幸い、消費者の死亡、重傷病、火災などの「結果」が生じたものではないため、現段階でこの法律による消費者庁への報告義務はありません。
 ただし、今後、実際に発火事故が起きたときは、これを知った日から10日以内の報告義務を負います。その場合は必要に応じて公表されます。
 一方、重大製品事故に該当しない事故情報は、任意で「NITE(ナイト)」(独立行政法人製品評価技術基盤機構)へ報告することを検討することになります。
 これは強制されない事故情報の収集制度で、製造・輸入事業者のみならず小売販売事業者等、関係機関からも報告を受け付けています。NITEに報告した場合、事故情報はNITEのウェブ情報において検索可能な状態で公表されます。
 以上のとおり、貴社は、消費者庁には、現時点で法的には報告義務を負いません。
 一方、任意ですが、NITEへの報告は推奨されています。本件で、万が一の事故が起きた場合に、貴社として、問題を隠そうとしたことなどがあれば、それ自体、さらなる非難や賠償の対象になると思いますので、やはりお客さまの安全第一を考えて行動されるべきです。
 したがって、以下のような方法をご検討下さい。
1、購入をしたお客さまに対し、できるかぎり、直接の連絡を取る等の努力をして、事故を防ぐ必要があると思います。貴社のホームページに公表したり、お客さまに通知を出すことなども検討されてください。
2、また、できれば、前述したNITEにも、報告をすることをお薦めします。公表はされますが、評価される「事後対応」にはなると思います。


〈プロフィール〉
 1961年東京生まれ。85年司法試験合格。86年早稲田大学法学部卒業。88年に弁護士登録して、さくら共同法律事務所に入所し、94年より経営弁護士。現在、130を超える企業・団体の顧問弁護士を務める。会社法などの一般的な法分野に加え、特定商取引法・割賦販売法・景品等表示法・知的財産法を専門分野とし、また、数多くの大規模企業再生・倒産事件を手がけてきた。業界団体である全国直販流通協会の顧問を務める。著書に「こんなにおもしろい弁護士の仕事」Part1~2(中央経済社)などがある。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

千原弁護士の法律Q&A 連載記事
List

Page Topへ