【千原弁護士の法律Q&A】▼319▲ 退職者が顧客リストを利用するのは問題では?

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〈質問〉

 当社は、顧客リストを活用しながら訪問販売を行っています。当社の創業時からの取締役副社長Aが、去年、突然、会社を辞めました(取締役も退任しました)。Aは、在職時に、弊社の顧客リストのデータを自らのパソコンに保存し、それを弊社の業務に用いていたのですが、退任時に、そのデータを廃棄しなかったようなのです。そのデータを使って、当社の顧客に対し、別の会社のサービスについて営業をかけていることが判明しました。すぐに止めさせて、損害賠償を請求したいと思いましたが、紹介された弁護士に相談したところ、退社後に競業をしない誓約書を取っていないので、請求は難しいと言われました。釈然としない思いを感じています。顧客リストを廃棄せずに利用していること自体が問題になるのではないのですか?(訪販会社社長)

〈回答〉 不正競争防止法は限定的なため誓約書は必要

 誤解されることが多い典型的な事例だと思います。

 会社の機密を持ち出したり利用したりする場合、不正競争防止法の適用が考えられます。ただし、ご質問の事案において、この法律で、差し止めや損害賠償請求が認められるのは、原則として次に挙げる要件を「全て満たしている」場合です。その場合、会社の顧客情報は「営業秘密」に該当し、Aに対し、使用差止請求および損害賠償請求を行うことができます。

(続きは、「日本流通産業新聞」」10月22日号で)

〈プロフィール〉
 1961年東京生まれ。85年司法試験合格。86年早稲田大学法学部卒業。88年に弁護士登録して、さくら共同法律事務所に入所し、94年より経営弁護士。第二東京弁護士会所属。現在、130を超える企業・団体の顧問弁護士を務める。会社法などの一般的な法分野に加え、特定商取引法・割賦販売法・景品等表示法・知的財産法を専門分野とし、また、数多くの大規模企業再生・倒産事件を手掛けてきた。業界団体である全国直販流通協会の顧問を務める。著書に「Q&A連鎖販売取引の法律実務」(中央経済社)などがある。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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