【千原弁護士の法律Q&A】▼190▲ 会員グループの脅しに困っているのだが…。

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千葉弁護士

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【質問】

 当社は、日本全国に会員がいるネットワークビジネス(NB)会社です。最近、地方の会員グループのことで非常に困っています。同グループのリーダー格のA会員は、元暴走族らしいと聞いていますが、ことあるごとに、会社に対し無理難題を吹っかけてきます。今回も、組織の系列変更をごり押ししてきました。「応じられない」と回答したところ、「会社の問題をいろいろ知っているから、グループ全員で消費生活センターに行って、クレームを言う。そうなれば会社は業務停止になる」というような脅しをかけてきました。当社のスタッフ一同困り果てており、A会員らの除名処分を検討していますが、問題ないでしょうか? また、実際に消費生活センターに行かれて、当社が業務停止になるのも困るのですが。(健康食品NB会社社長)

【回答】 書面による事前通知の上で除名処分も

 NBの場合、事前に会員の素性をすべて審査するのはムリですから、いろんな人が入り込んでしまうのは避けられないですよね。私が以前に相談を受けた会社では、元暴走族どころか、現役の暴力団員に組織が広まっていたことがありました。ご相談のケースは、これから信頼関係をもってビジネスをご一緒することはできないと思いますので、スタッフの方の心労も含めて、除名処分をされるしかないと思います。ポイントは以下のとおりです。
 まずは、恐喝行為などの証拠をできるだけ残して、言った・言わないの争いにならないようにすることです。会話を録音しておくのがベストですし、周囲で問題発言などを聴いた人の話を具体的に文書にまとめておくことも大事だと思います。さらに、事前に、文書ベースで、Aに対して改善を要求し、処分を予告する書面を送るのも効果的だと思います。
 これによって、Aから除名を不当とする裁判を起こされたり、消費生活センターなどに、嘘のクレームを入れたとしても、会社側で、きちんと反論することができると思います。
 次に、消費生活センターの件ですが、私は、それほど心配する必要はないと思います。消費生活センターが、会社の行為を問題にするのは、「入るべきではない人を入れた」「買うべきではない人に買わせた」というものです。
 組織に入った後の除名や金銭トラブルなどは、あまり問題にしません。また、Aのような人が、予告どおり消費生活センターに行くことも、私の経験ではほとんどありません。さらに、ご心配であれば、貴社において、早い段階で、消費生活センターや警察などに相談をしておく方法もあると思います。
 もちろん、消費生活センターや警察が、相談を受けて、積極的に解決に動いてくれることはありません。しかし、消費生活センターであれば、Aから不当なクレームが入っても、少なくも、それを一方的に受け入れることはないと思います。
 また、警察であれば、(1)Aがたとえば反社会的な組織に属していることがあれば、その情報が得られる(2)貴社側から警察に相談している事実を、Aや消費生活センターにも明らかにできる─などのメリットがあると思います。なお、顧問の弁護士さんなどがおられたら、相談をして、いずれにせよ毅然と対応されることをお勧めします。


〈プロフィール〉
 1961年東京生まれ。85年司法試験合格。86年早稲田大学法学部卒業。88年に弁護士登録して、さくら共同法律事務所に入所し、94年より経営弁護士。現在、130を超える企業・団体の顧問弁護士を務める。会社法などの一般的な法分野に加え、特定商取引法・割賦販売法・景品等表示法・知的財産法を専門分野とし、また、数多くの大規模企業再生・倒産事件を手がけてきた。業界団体である全国直販流通協会の顧問を務める。著書に「こんなにおもしろい弁護士の仕事」Part1~2(中央経済社)などがある。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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