【千原弁護士の法律Q&A】▼290▲ 登録申請書のPDFデータでの保管は法的に問題は?

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〈質問〉

 弊社は、連鎖販売企業ですが、以下の点を教えてください。(1)過去の登録申請書の保管について、毎月かなりの費用を要しています。登録申請書は「契約書」に当たると思いますが、必ず原本の保管が必要なのでしょうか。当社としてはスキャンしてPDFデータを保有する方法が取れればと考えていますが、法的な問題がありますでしょうか。また法的な問題がない場合でも、先生の方で何か問題点があれば、教えていただければと思います。(2)当社の概要書面では、会員の死亡について、「死亡の日から3カ月以内に当社に申請、当社が受理すれば、死亡した日にさかのぼり会員資格が承継となる、ただし、承継できるのは2親等以内の親族に限る」旨の規定となっています。今回、死亡した会員の相続人として、3親等に当たる方が、法定相続人として承継を主張してきています。当社において上記の規約を示してお断りしたところ、代理人弁護士から、「法定相続人には会員資格の承継を認める義務があるので、直ちに手続きをするように。しない場合は法的な手続きを検討する」旨の書面が届きました。当社としては、その弁護士の主張に応じる義務はあるのでしょうか。(ネットワークビジネス会社社長)

〈回答〉 PDFデータにも一定の証拠能力

 (1)まず特商法の観点からは、登録申請書についての法定の保管期間はありません。
 よく誤解されるところなのですが、登録申請書は、確かに契約書に該当する書類ではあるのですが、概要書面・契約書面などの法定書面とは異なり、特商法の規制自体を受けません。
 ウェブによる登録などのケースで、登録申請書自体が存在しなくても、何も法的な問題はありません。
 そこで、登録申請書を保管するかは、万一、訴訟等になり、消費者側から不当な主張があった場合(たとえば申し込んで覚えがない等)、貴社として、エビデンスを示して反論できるか? という見地からの判断となります。

(続きは、「日本流通産業新聞」8月1日号で)

〈プロフィール〉
 1961年東京生まれ。85年司法試験合格。86年早稲田大学法学部卒業。88年に弁護士登録して、さくら共同法律事務所に入所し、94年より経営弁護士。第二東京弁護士会所属。現在、130を超える企業・団体の顧問弁護士を務める。会社法などの一般的な法分野に加え、特定商取引法・割賦販売法・景品等表示法・知的財産法を専門分野とし、また、数多くの大規模企業再生・倒産事件を手掛けてきた。業界団体である全国直販流通協会の顧問を務める。著書に「Q&A連鎖販売取引の法律実務」(中央経済社)などがある。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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