【千原弁護士の法律Q&A】▼186▲ 500円の商品は特商法適用されるのか?

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〈質問〉

当社は、電話勧誘販売で、健康食品や化粧品をあつかっています。今回、お試し商品として、500円のパックを用意して、お客さまに販売しようと思っています。正直に言って、こちらは赤字覚悟なので、クーリング・オフなどを受けると困ります。また、少ない金額なので、契約書面も要らないと考えています。たしか3000円未満の商品については、特定商取引法の適用がないと思いますが、いかがでしょうか。その他、注意点があれば教えてください。  (電話勧誘販売会社社長)

(回答)たとえ1円でも特商法適用はある
 重大な勘違いをされています。訪問販売や電話勧誘販売については、たとえ1円でも、特定商取引法の適用はあります。ですから当然、法律で定められた契約書面をお渡しして、クーリング・オフを受けるのが基本となります。
 ただ、3000円未満の「現金取引」の場合は、契約書面に、法律に従って、その点を明記することによって、クーリング・オフについては適用外とすることができます。
 「現金取引」は、契約を結んだ時に、商品をお渡しして、かつ代金を全額払ってもらう形です。訪問販売では可能ですが、電話勧誘販売では、電話で契約が成立したその日に、商品をお渡しして、代金を払ってもらうということとなり、まずあり得ないのではないでしょうか。
 そこで、貴社の500円のプランでも、高額の商品と同じく、(1)契約書面をお送りして(2)クーリング・オフも受ける109640というのが基本になると思います。それで予算が合わないのであれば、プラン自体を変更されるしかないと思います。
 なお、このプランを進められる場合ですが、その他の注意点としては、なんと言っても、「事前告知義務」「不実告知」の点だと思います。
 たとえば、貴社が、500円の安いパックだけの説明をして、その後に、高額の商品をお勧めすることを隠すようなトークや対応をされたとします。この業界の場合、お客さまからのクレーム相談が消費生活センターに入るのは、どうしても避けられないですよね。その時に「500円の安い商品だと言われて買ったら、その後に5万円の健康食品を買わされた」というような相談が複数件入ったとしたらどうでしょうか。
 消費者庁や都道府県は、事前告知義務違反、不実告知(あるいは重要事実の不告知)であるとして、貴社に対する業務停止などの行政処分を下すことを真剣に検討すると思います。
 リスクを避けるためには、(1)お試しパックであること(2)気に入っていただければ、5万円などの本来の値段による商品のお勧めもすること109640をきちんと事前にお話しすることが大切だと思います。
 お試しパックに、本来の商品の金額を書いた分かりやすい、パンフレットを同封するのも効果的でしょう。
 また、2回目以降の商品のお勧めをするお電話の時は、もちろんお値段を正確にお伝えして、お客さまが難色を示されたら、すぐに勧誘を中止するマニュアルを設けて、きちんと守ることも大事だと思います。
 ただ、それでも、問題にされてしまうことはあると思いますので、慎重な対応をお薦めします。

〈プロフィール〉
 1961年東京生まれ。85年司法試験合格。86年早稲田大学法学部卒業。88年に弁護士登録して、さくら共同法律事務所に入所し、94年より経営弁護士。現在、130を超える企業・団体の顧問弁護士を務める。会社法などの一般的な法分野に加え、特定商取引法・割賦販売法・景品等表示法・知的財産法を専門分野とし、また、数多くの大規模企業再生・倒産事件を手がけてきた。業界団体である全国直販流通協会の顧問を務める。著書に「こんなにおもしろい弁護士の仕事」Part1~2(中央経済社)などがある。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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