【ニュースの深層】□□74 中小機構今年度2制度新設/EC支援紹介や相談対応

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 独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構、高田坦史理事長)は今年度(17年4月―18年3月)、二つの制度を新設して中小企業のEC支援事業を強化する。「パートナー制度」を新設し、中小企業とEC支援企業のマッチングを推進。さらに独自の「相談窓口」を設けて、中小EC事業者の相談に対応できるようにする。中小企業のEC参入を後押しする〝場〟を提供するだけでなく、より直接的に中小企業のEC事業を支援できる体制を構築していく計画だ。

■EC事業継続に重点

 中小機構は今年度中に、「パートナー制度」と「相談窓口」を新設する。昨年までの取り組みは、企業のEC参加を促すことはできたが、EC事業を継続するためのフォローアップまではできていなかった。
 「パートナー制度」はシステム開発やコンサルティングなどのEC支援企業を登録し、中小企業からの相談に応じて最適な支援会社を紹介する仕組み。従来、中小機構が開催したイベントにおいて中小企業とEC支援会社をマッチングしていた。
 中小機構はEC支援企業に、中小企業でも簡単に導入できるシステムやサービスの開発を促す。
 今夏をめどにEC企業からの相談窓口を設ける。従来、EC事業に関する相談は、EC支援企業を紹介するなどして対応していた。
 これまでのEC支援事業によって、150人以上の専門家と関係を構築している。こうした専門家に相談窓口を任せ、中小機構内で相談内容を蓄積できるようにする。さらなる増加が予測されるEC事業の相談に対応するノウハウを蓄積し、中小企業にEC事業を継続させることが狙い。

■既存支援は一部変更

 既存のEC支援事業は内容を一部変更して継続する。中小機構はこれまで、スタートアップ向けに「動画講座」を配信し、EC運営から間もない企業向けは「相談会」を実施していた。ECの売り上げを伸ばすために支援会社との出会いを促す「イベント」を開催したり、海外に販路を開拓するための「補助金制度」も設けていた。
 今年度は動画配信数を40本以上増やし、内容を細分化する。思うように売り上げが伸ばせない企業には、「プロモーション」「マーケティング」といった課題に合わせた動画を提案する。
 現在は「準備編」「運営編」といった大きなくくりで動画を配信しており、EC企業のニーズに十分対応できていなかった。
 相談会は作年度、150会場で開催し、約3000人が参加した。今年度も引き続き相談会を開催するが、セミナーを主体にする。
 従来は個別相談が中心だったが、相談内容が子細化していることもあり、各会場に派遣できる適任者を見つけるのが難しかった。
 「講師が話したいセミナー内容を集約し、各会場に派遣するような仕組みにする」(伊原誠・販路支援部参事)と話す。
 EC支援のイベントは9月以降に、東京と大阪で開催する。
 昨年度のイベントは「国内EC向け」を1回、「越境EC向け」を3回開催し、約2000人が来場した。来場者の大半が「国内EC向け」「越境EC」向けの二つイベントに参加していたため、イベントを一本化してEC企業と支援会社が効率的に出会えるようにする。
 
■補助金は継続

 越境ECに関する補助金は昨年度と比べて減額となるものの、今年も継続する予定だ。
 昨年度は越境ECの自社サイト構築や翻訳、マーケティングなどを対象に、最大で100万円を給付していた。昨年度の補助金は、TPP対策として国から交付された補助金を原資としていたが、今年度は国からの補助金が打ち切られた。
 ただ、昨年度は153社の公募に対して325社の申し込みがあり、好評を得たことから数十万円規模の補助金給付を検討している。
 独自サイトで越境ECを開設しても売り上げが伸び悩む企業も多いことを考慮し、補助金の対象は海外のECモールへ出店する企業に限定する計画だという。
 日本人向けのサイズを海外で販売していたため、越境ECの売り上げを伸ばせなかったアパレル企業の事例などが報告されていた。今年度は「海外でも売れる」を重点に置き、補助金の審査を進める。早ければ4月中にも公募を行いたい考えだ。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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