【インタビュー】〈連鎖販売から撤退〉エイボン・プロダクツ エドワード・ホール社長/今後はインターネットで顧客を開拓する

  • 定期購読する
  • 業界データ購入
  • デジタル版で読む
エドワード・ホール社長

エドワード・ホール社長

エイボン・プロダクツ(本社東京都、エドワード・ホール社長)は4月7日、ネットワークビジネス(NB)から撤退した。今後はシングルレベルの訪問販売と通信販売に経営資源を集中する。15年1月5日付で取締役社長兼CEOに就任したホール社長に、NBから撤退した理由や今後の事業戦略を聞いた。

連鎖の会員は小売りに移行

 ─社長として新たに取り組むことと、前社長の取り組みを引き継ぐことをうかがいたい。
 ホール まずは前社長から引き継ぐことをお伝えしたい。当社のビジネスの中核は、女性が知人に商品を販売するシングルレベルのダイレクトセリングだ。エイボンのアイデンティティーであり、それは今後も変わらない。エイボンメンバーは商品に強い愛着を持ち、しっかりとビジネスを手掛けてくれている。これまで通り、エイボンメンバーをきちんとサポートしていく。
 私と前社長とで異なる点は、成長が見込めるビジネス分野に対する認識だろう。前社長はNBの拡大に力を入れた。しかし、NB業界には非常に強いライバルが存在しており、競合を追随するのは難しい。別の分野にビジネスチャンスがあると私は思う。例えば、ソーシャル・ネットワーキグ・サービス(SNS)などを活用して新しい客層にアプローチするなど、インターネットを活用したコミュニケーションに可能性を感じている。
 ─NBから撤退し、今後はインターネットを活用したビジネスに資本を投下するのか。
 ホール その通りだ。NBを従来通り続けることはない。08年に開始した「エイボン・セールス・リーダーシップ・フレームワーク(ASLF)」と14年に開始した「ナチュプロ」は4月7日付で終了した。NBのリーダーの多くは現在、ローズクラブ(訪販事業)のメンバーとして小売りを行っている。全てのリーダーがローズクラブに移行したわけではなないが、大半はビジネスを継続している。
 今後の戦略として現在、オンラインでコミュニティーを作ることができる独自のシステムを準備している。ブログ機能やエイボンメンバー同士が交流する機能、通販機能などを備えているプラットフォームだ。若い世代は、どのような手段でコミュニケーションを取り、どのような経路で商品の情報に触れているのか。そのことを理解して対応しなくてはいけない。


オンラインの販促ツール提供

 ─エイボンメンバーがオンラインでコミュニティーを作るためのプラットフォームを提供すると。
 ホール プラットフォームはすでにある程度出来上がっており、今年7月までには提供できるだろう。エイボンメンバーの中にはフェイスブックなど他社のSNSを使ってビジネスを行っているケースがある。それは当社がきちんとしたシステムを提供できていないためだ。エイボンメンバーが効率的に販売を行えるように当社独自のプラットフォームを提供する。
 エイボンメンバーはインターネットやテクノロジーの活用が苦手だと思われることもあるが、実際はそうではない。表彰式で全国ベスト10に入ったメンバーの多くはインターネットで商品を発注している。エイボンメンバーはウェブを使えないという認識は間違いだろう。すでに自発的にSNSなどを販売に活用しているメンバーは多い。そういった方々の販売をサポートする。
 ─エイボンメンバーのブログを読んだ消費者は、そのプラットフォーム上で商品を買うこともできるのか。
 ホール 消費者はエイボンメンバーから買うこともできるし、エイボンの公式通販サイトで注文することもできる。
 ─オンライン広告にも力を入れる必要がありそうだが。
 ホール 広告はブランド戦略に大きく関わってくる。「ミッション」や「スイ」など、サブブランドごとに商品のイメージは異なる。その住み分けや訴求をどのように行うかが課題だ。新しいブランドを立ち上げるときにインターネットだけで販売するとか、特定の年齢層だけに販売することも考えていく。


負の遺産は14年に整理

 ─14年12月期の売上高の増減は。
 ホール 期中にASLFを縮小したため売上高は下がった。ASLFを終了することは14年夏ごろには周知していたためだ。14年を振り返ると本当に大きな変化があった。ASLFの縮小、製造や物流の外注化、人員のリストラなどを行った。(業績立て直しに向けた)さまざまな取り組みを昨年のうちに終わらせることができたので、15年は新しいことに取り組むことができる。
 ─15年はオンラインのコミュニティープラットフォームの構築やネット通販に力を入れると。
 ホール オンライン事業全体を強化していく。販売チャネルを広げていきたいし、主に40代女性を獲得するための商品開発にも力を入れていきたい。オンラインプラットフォームの成果は今秋ごろから具体化すると思う。今年の取り組みを基盤とし、16年はさらに新しいことに取り組んでいく。


〈プロフィール〉
 米国で21年間、金融とIT業界に携わった後、03年に日本アイ・ビー・エムの海外任務で来日した。06年にゴールドマン・サックス証券のヴァイス・プレジデントに就任。08年に新生銀行CFO兼新生フィナンシャル取締役に就任した。10年には日本アムウェイのCFO兼COOに就任。13年9月にエイボン・プロダクツに入社、COOやCFOを務めた後15年1月に取締役社長兼CEOに就任した。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

Page Topへ