【食品通販 インタビュー】 食文化 萩原章史社長/豊洲市場活用し、通販物流強化

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 フルーツやカニといった高級食品のECを運営する食文化(本社東京都、萩原章史社長)は、10月11日の豊洲市場の開業に向け、市場内に自社専用の物流拠点を開設した。全国から豊洲市場に集まる商品の中から、競り人が厳選した商品を、同社が買い付けてECで販売する。同拠点では、提携する地方の食品企業の在庫管理や商品発送も請け負うという。「豊洲市場内の拠点を活用し、都市部への配送を強化する」と話す萩原社長に、豊洲市場の新拠点と食品通販の物流の課題について聞いた。

■築地拠点の課題が解消
 ─豊洲市場に物流拠点を設けた目的は。
 当社はもともと築地市場内にも、物流拠点とオフィスを構えていた。市場の豊洲移転によって、物流の効率化を図ることもできると考え、準備を進めてきた。
 当社では、東京中央卸売市場で商品を直接買い付けることができる「買参権(ばいさんけん)」を取得しており、買い付け先の仲卸業者とも提携している。これまでも築地市場で、築地の”競り人”が目利きした質の高い商品を買い付け、当社の「築地市場ドットコム」などで販売してきた。築地市場の仲卸業者との信頼関係も築いてきた。
 築地市場は、衛生面と荷物管理に大きな課題を抱えていた。築地市場内には、荷物や人が簡単に出入りすることができた。取引された商品の中には、出所が不明確なものもあったのではないか。トラックが市場内を移動できず、商品の物流にも課題があった。
 豊洲市場の新施設ができたことにより、衛生面・荷物管理・物流の課題が解消された。冷凍・冷蔵の管理、入出荷した商品情報のトレーサビリティーの管理は十分だ。
 物流面も改善する。当社が市場内に借り受けている100坪の倉庫には、トラックを直接横づけすることができるようになった。荷物だけをエレベーターで移動させる必要がなくなった。

■仲卸業者からの信頼
 ─なぜ市場内にそこまで大きい拠点を持つことができたのか。
 仲卸業者と長年の信頼関係を持っていることが大きな理由だ。築地市場と取引を開始してから18年になる。市場には競り人の独特の言葉や文化があり、一般の人がすぐに理解するのは難しい。当社はこうした競り人の世界を理解しており、競り人の言葉を翻訳して外の世界に伝えることができると考えている。
 仲卸業者は、旧態依然の流通方法に危機感を抱き、通販・EC業界を主要な販路として見てくれている。信頼を得ることができている理由の一つとしては、そういうこともあるだろう。仲卸業者が危機感を抱くのは、卸先の小売りの流通業者が減ってきているからだ。
 当社は、東京近郊に住む富裕層を顧客としてEC事業を運営している。コンテンツ制作やサイト露出の施策も、富裕層を意識して行っている。都市部への配送を強化する仕組みづくりも行っている。仲卸業者からは「萩原さんはマーケッターだ」と言われる。富裕層をターゲットにどう売るかということを考え抜いてきた結果、仲卸業者が主要な卸先として見てくれるようになったと考えている。

■食品専門の3PL事業展開
 ─他の通販企業と提携していると聞いた。
 当社では現在、他の企業との提携に基づき、3PL(サードパーティーロジスティクス、一部の物流機能の委託)事業も展開している。同事業では、地方の食品通販企業の、関東圏に配送する商品の在庫を管理している。おせちやカニの通販で有名な小樽きたいち(本社北海道)とも今年初旬から提携。今後も提携先は増える予定だ。豊洲の拠点を、この3PL事業にも活用していく。
 都市部の人口増加に伴い、都市部への配送の需要が高まっている。ただ、地方から都市部に向けて配送するには大きな物流コストがかかる。産地直送という通販の配送スタイルも厳しくなっていくだろう。当社は将来的に、都市部への配送網を自社で構築することも考えている。そうなれば豊洲の新拠点の重要性は、今後より高まっていくだろう。


【企業データ】
 設立 2001年
 通販売上高 24億円
 取扱商品 生鮮食品

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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