東京急行電鉄は19年1月下旬、東急線沿線を対象に始めた食品やギフト、家事代行などのホーム・コンビニエンスサービス「東急ベル」のグループECサイトをリニューアルする。ネットスーパーや東急百貨店のECサイトをリニューアルし、商品やサービス別に再編、利便性を高める。ハウスクリーニングや家事代行といった計57種類のサービスを用意し、専門のスタッフが個別訪問して顧客ニーズを取り込んでいる。リテール事業部の福田育弘課長補佐にECサイトリニューアルの狙いについて聞いた。
─「東急ベル」の現況について聞きたい。
現在までに利用者は約10万人にまで増えており、着実に沿線のお客さまに対する認知は高まっている。ベルキャストの人数も倍とまではいかないが、着実に増やしている。サービス開始から5年が経過したことを受けて「ベルキャスト認定証更新制度」を設け、再研修を行い、接客品質を維持する制度を付加した。
ただ、各ECサイトでそれぞれ会員登録する必要があったり、カートがそれぞれで決済する必要があった。こうした課題を解決するためにECサイトをリニューアルすることに決めた。
─リニューアルの内容について聞きたい。
「東急ベル」では、食品スーパーの東急ストアが手掛ける「東急ストアネットスーパー」とECサイト「東急ストアオンラインショップ」、イッツ・コミュニケーションズが手掛けるECサイト「ポニッツショッピング」、東急百貨店のECサイト「東急ネットショッピング」、東急電鉄が手掛ける「東急ベルセレクト」という計五つのサイトを展開している。お客さまからすれば、何がどう違うのかが分からなかった。そのため、お客さまの目線に立って、これらを三つのサイトに統合することに決めた。
生鮮品の「東急ストアネットスーパー」についてはそのままの形で維持する。各サイトで取り扱っていたギフトについては「ギフト日和(びより)by東急ベル」に切り替える。
三つ目は、東急の駅で月刊23万部を無料配布する「サルース」というフリーペーパーと連動したECサイト「サルースオンラインマーケット」を新たに立ち上げる。20〜30代を主体にコーヒーやワインなど2000品目の取り扱いを想定している。
これまではギフトサイトなどで、東急沿線とはあまり関係のないものを取り扱ってきた。今回のECサイトでは、サルースに掲載されているような沿線の店舗の商品をECサイトでも購入ができることをコンセプトに置いた。熱心な読者の人は、「サルース」に掲載している店舗に出向いて買い物をする人が多いと聞いており、ECと連動させることでニーズを取り込めるものと期待している。
まずは、過去に掲載した商品やサービスの取り扱いを予定しており、雑誌に特集ページを企画することで連動させる。また、交通広告などでPRしていくほか、インフルエンサーも活用していく。商品だけはなく、チケットなど体験型商品などの販売も視野に入れている。
─ギフトに関してはシニア層を狙うのか。
百貨店などの店頭に来ることができなくなった60代以上の顧客が中心になりそうだ。「ベルキャスト」が顧客宅でギフトカタログを配布することで対面で訴求することを考えている。場合によっては、キャストが注文を聞いて入力ができる機能も検討している。これによって優良顧客の掘り起こしに期待している。各社で対応していたカスタマーサービスも一本化して、ユーザビリティーを高めていく。
─新ECサイトの配送については。
東急沿線の配送ついては、自社配送スタッフの「ベルキャスト」が届けるが、ギフトなどで配送エリア外の地域は宅配事業者に委託する方針だ。
─リニューアルを機にアフターフォローにも力を注ぐのか。
新たにCRMを導入し、お客さまのアフターフォローを強化する。顧客情報を一元管理し、どのスタッフでも対応できるようにする。ベルキャストが顧客対応履歴をもとに、訪問した際にもひと声かけることで、「御用聞き」の接客レベルの向上に役立てていきたい。
【企業データ】
設立 (東急ベル・サービス開始時期)2012年6月
売上高 非公表
取扱商品 東急百貨店のECサイトや東急ストアのネットスーパーや計57のサービス
【食品通販 インタビュー】 東京急行電鉄 リテール事業部 東急ベル・EC推進部 福田育弘課長補佐/CRM導入で「御用聞き」の接客レベル向上
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