クックパッドは9月20日、都内の一部地域で生鮮食品のECサービス「クックパッドマート」を始めた。商品の受け取りは、ユーザーの自宅ではなく、近隣の店舗などになる。まずは、東京の渋谷区・世田谷区・目黒区の一部で開始しており、関東近郊からエリアを広げる。買物事業部長で新規サービス開発部の福崎康平氏に、クックパッドがECを再開した背景や今後の事業展開について聞いた。
─クックパッドのECについて聞きたい。
食品EC「やさい便」のサービスを16年8月に停止して以来、当社では2年ぶりのサービスとなる。メンバーはその当時とは全く異なり、新規事業として改めて始めることになった。事業部ができたのは今年5月で約10人のスタッフで始めている。
─「クックパッドマート」を始めた経緯について教えてほしい。
社内では食品関連のECに再チャレンジしたいという考えがあった。料理に関わるレシピの領域と買い物の生鮮品の流通、生産者への支援への関わりについて新規事業で取り組んでいきたいという思いがあった。
─「クックパッドマート」はどのような仕組みなのか。
当社が構築したプラットフォームに、生鮮食品などの販売店に出店してもらい、量販店などの店舗で商品が受け取れるサービスになる。販売する商品を協力店舗からピックアップする形を採用することで、レシピの提案、買い物代行、産地支援につなげようというのがコンセプトだ。
商品を販売したいという精肉店や鮮魚店、農家などの生産者を募集し、一定の条件をクリアした店舗に出店してもらう。現在はさまざまな店舗から出店希望の問い合わせをもらっている。
スーパーに通うように日常使いしてもらうのがコンセプトで、既存の食品ECやネットスーパーと競合しない市場を狙っている。
当社の強みであるレシピを前面に押し出し、調理に必要な食材をECで購入できる。ネットで注文すると自宅の近隣にある店舗に当社と契約するルート配送のスタッフが商品をピックアップし、受け取り店舗で商品を受け取れるようにする。
─取り扱う商品にこだわりなどはあるのか。
特に、他社のECのように有機野菜などという品質や基準を設けているわけではない。生産者に当社が直接契約する形で進めている。
通常の食品ECとは異なり、レシピにひも付けるので、レシピに必要な食材を購入するという流れだ。現在のレシピにないものがあれば新たに開発する予定だ。
─商品の受け取り場所を自宅ではなく、近隣の店舗とした理由は。
クックパッドマートは、商品の受け取り方法について、クリーニング店やドラッグストアなどを想定している。
ECでは、自宅へ届ける個別配送のコスト負担や、オートロックマンションなどの玄関で場所をとってしまう「置き配」について新たな課題が出てきている。また、自宅配送の場合、ユーザーの視点で見れば、時間帯指定でも2時間拘束されるという不便な点があった。
当社が商品をピックアップできる店舗を確保すれば解決できると考えた。ユーザーが店舗で商品を受け取る際の手数料は無料にした。提携する店舗には、来店動機につながることから、双方にメリットがある。
現在のところ、ドラッグストアなどのチェーンストアや新聞販売店などに当社から直接声をかけている。店舗内に自動販売機ほどのスペースがあれば、ラックを配置していく。手数料を当社が支払う。
─事業としての目標は。
あくまで試験的な事業ということもあり、実際にユーザーが利用して、どのようなメリットと課題が出てくるかを見極めたい。会員数というより、継続している会員がどのくらいいるのかを重要視している。
来年以降は、成功しているという前提だが、関東近郊からエリアを広げていきたい。
【企業データ】
設立 1997年10月1日
EC事業「クックパッドマート」を9月20日に開始
【食品通販 インタビュー】 クックパッド 買物事業部長兼新規サービス開発部 福崎康平氏/レシピを前面にEC開始
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