アマゾンジャパンでここ数年、食品や飲料といった消費財カテゴリーの認知・売り上げが拡大している。大手食品メーカーがアマゾン限定の商品を続々と開発していることや、アマゾンジャパンがプライベートブランドの拡充を推進していることなどが、認知拡大の要因になっているという。アマゾンジャパンで食品・飲料事業を統括する、吉沢直大事業部長は、「メーカーと協力して商品開発を行い、個々のユーザーのニーズに応えるストアにしていきたい」と話す。アマゾンでの食品の販売やPBの展開について聞いた。
■食品がランキング常連に
─アマゾンの食品カテゴリーの販売状況について聞きたい。
アマゾンで食品を購入できるということは、ここ数年程度で、お客さまにもしっかりと認知されるようになってきている。売り上げもそれに応じて伸びている。売上額は非公開だが、16年のセールイベント「Amazon Prime Day(プライムデー)」では、カルビーの「フルグラ」の売り上げが伸び、アマゾンのタブレット端末以外で最も売れた商品となった。
最近の食品・飲料の売れ筋ランキングを見ても、ナショナルブランドのミネラルウォーターや炭酸水、コメといった商品が並ぶようになっている。
食品カテゴリーの認知拡大に伴い、ユーザーとのコミュニケーションも取りやすくなっている。今年4月には、小麦粉アレルギーを持った子供に、アマゾンで購入した米粉を使ってパンを作るという内容のテレビCMの放映を開始した。反響も大きかった。現在は、アマゾンで食品を購入するということについて、今まで以上にコミュニケーションを取れていると実感している。
■一人一人の需要に対応
─アマゾンの食品部門の商品展開について聞きたい。
アマゾンは「地球上で最も豊富な品ぞろえ」という企業理念を掲げている。食品カテゴリーにおいても、一人一人のニーズに応えられるような、豊富な品ぞろえを実現したいと考えている。
例えば、オンラインではアマゾン限定販売の商品で、グリコのポッキー「女神のルビー」という商品がある。17年10月にグリコが発売した商品で、赤ワインと合うようチーズとスパイスを練りこんだ、大人向けのポッキーとなっている。
大手食品メーカーは実店舗での展開を前提に商品の開発を行う。ユニークな商品を開発しても、実店舗の棚に置けず、思うように展開できないこともある。ただ、アマゾンを利用してもらうことで、実店舗の棚の効率にとらわれずに商品開発を行うことができる。棚の効率にとらわれない多彩な商品の展開は、ユーザー一人一人のニーズに応えることにつながる。
メーカーがユニークな商品を展開するだけではない。マーケットプレイスの食品カテゴリーへの出品者も順調に増加している。おせちやカニといった、季節もの商品の出品者も増えている。ウナギはギフト商品として通年で人気があり、ウナギの出品者の商品もよく売れている。自社で円滑な配送網を構築している出品者が、プライム対象商品として出品し、ユーザーのニーズをつかむケースも増えている。
■日用品もこだわり品も
─食品ジャンルにおけるPB展開について聞きたい。
アマゾンの食品・飲料の売れ筋ランキングを見ると、アマゾンのPBの天然水が上位にランクインすることが増えている。天然水は、「HappyBelly(ハッピーベリー)」という、日常的に使う食品などのプライベートブランドから展開している。現在同ブランドからは、31種類の商品を展開している。
アマゾンでは、「Wickedly Prime(ウィキッドリープライム)」という、食にこだわりを持つお客さま向けの食品PBも展開している。原材料などにこだわった、付加価値の高い、レトルトカレーやおつまみなどが人気だ。
PBの展開においても、個々のユーザーのニーズに応えられる品ぞろえを目指している。
単品需要を捉える
─食品の通販事業における課題は。
単品買いの需要を増やしたいと考えている。例えば、天然水2リットルのペットボトルを購入するお客さまのほとんどが、ケース単位で購入している。単品買いには逆に伸びしろがあると考えている。
いくつかの単品の商品をまとめてお得に購入できる、プライム会員向けのサービス「Amazonパントリー」というサービスも運営している。こちらのサービスの認知度が向上すれば、単品利用の需要を捉えることもできるだろう。
【企業データ】
設立 2000年
売上高 非公開
取扱ジャンル 食品全般
【食品通販 インタビュー】 アマゾンジャパン 消費財事業本部 食品&飲料事業部兼商品企画事業部 吉沢直大事業部長/個々のニーズに応えるサイトに
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