「キャッシュバックショッピングサイト」と称するアフィリエイトサイトの会員権を、ネットワークビジネス(NB)方式で広げ、クーリング・オフ拒否や、書面不備などの違法行為で物議を醸している組織「DubLi(デュブリ)」が再び不審な動きを活発化している。会員に声高に宣伝していた「日本企業のストアイン」が未だにない中、ビジネス誌「週刊ダイヤモンド」に大々的に記事広告を2度にわたり掲載。事実誤認に基づく契約により、被害が拡大することが懸念される。8月24日には、デュブリの親会社のOminto(オミント、本社米国フロリダ州、マイケル・ハンセンCEO)が、ナスダック株式市場の上場要件に違反していたことを公表した。
「デュブリ」は、会員制のアフィリエイトサイトだ。通常のアフィリエイトサイトではアフィリエイターが受け取る収益の一部を、購入者自身にキャッシュバックする仕組みとなっている。デュブリでは、「会員になると大手を含めたECサイトで商品を購入した際にキャッシュバックを受けられる」などとうたい、会員を集める代理店(ビジネス会員)を、NB方式で募集している。6万~28万円を支払ったビジネス会員は、紹介者数に応じた報酬を受け取ることができるなどとしていた。
デュブリで問題とされたのは、法令順守意識のあまりの低さだ。「法定書面」なしで勧誘活動を行っていた事実もすでに確認されている。
これまでデュブリは、日本の著名な通販サイトの名前をあげながら「もうじきストアインする」などとしてビジネス会員の勧誘を続けてきたが、日本企業のストアインは現時点(8月30日)で皆無というのが現状だ。
ただ、これまでにストアインが全くなかったわけではない。16年9月に公開された日本語版のサイトでは、同12月から日本企業のECサイトへのリンクが掲載されるようになった。その中には大手パソコンメーカーや食品メーカー、有名飲食店、中堅出版社もあった。しかし、年明けから徐々に日本企業のストアインは少なくなり、遅くとも1月25日までに日本企業のアフィリエイトリンクは完全に消えた。その後、デュブリへのリンク掲載を拒否していた靴下通販のタビオのアフィリエイトリンクが再び掲載されるという事件も起こった。タビオは「複数のASPを経由し、当社にとって不本意な形で掲載された」などと抗議、掲載はすぐに取り下げられた。それ以降、ストアインの動きは全くない。
アフィリエイトサイトもろくに機能していない中、米ナスダックに上場する親会社オミントにも暗い影が近付いている。8月24日、同社のIR情報ウェブサイト上に「ナスダック株式市場の上場要件に違反していた」などとするプレスリリースを発表したのだ。「米国証券取引委員会に6月30日までに提出しなければならなかった四半期報告書を出していなかった」からだという。「現時点で上場維持に直接的な影響はない」(IR)としながらも、「上場規則を順守するために必要な措置を定めた計画を速やかにナスダックに提出する」(同)としている。デュブリにとって数少ない有効な宣伝文句の一つだった「米国ナスダック上場企業」という看板にもほころびが見え始めているのだ。
そんな中、7~8月に、「デュブリ」は紙媒体を使った露出を活発化させた。「週刊ダイヤモンド」と高齢者向け情報雑誌「エール」に記事広告を掲載したのだ。いずれも、雑誌社の編集記事などではなく、記事の体をなした広告だ。しかし、「デュブリ」は会員らに対し、広告であることを明言せず、あたかも雑誌社の編集記事として記事が掲載されたかのように告知を行っていたことが分かっている。(=別記事参照)
本紙質問の回答を実質的に拒否
本紙は今年1月25日までに、デュブリやオミントに対して、問い合わせフォームやメール、ファクス送信など複数の方法をもって、質問状を送付していた。今年1月の時点で問いかけたのは、「日本で出回っている申込書などを見る限り、『DubLi』に関連する書面は(特商法が求める)要件を満たしていない。日本で事業展開を行う上で、コンプライアンスについてはどのように考えているのか」など、法令順守の考え方や、組織の運営体制などに関する計10項目の質問。ただ、8月30日現在デュブリ側からの本紙への連絡は一切なく、正式な回答は未だにないのが現状だ。
本紙では、質問状への対応状況などについて日本法人であるデュブリジャパン(本社東京都)の野萩裕弘GMに電話取材を何度か試みた。野萩GMは4月に一度、本紙の取材に対応したものの「質問状については把握しているが、上場準備などで対応ができておらず……」などと言葉を濁すにとどめ、質問状に対する明確な回答は行わなかった。その後も、電話取材を何度も試みているが「不在」を理由に回答を実質的に拒否しているのが現状だ。
今回、「日本企業のストアインの状況」「オミントの上場要件違反」「記事広告の掲載」などについて確認すべく電話や野萩GMの会社ドメインの個人メールアドレスへのメール送信などにより取材を試みたが、8月30日までに回答が寄せられることはなかった。
日本企業のストアインは一体どうなったのか。コンプライアンス体制はどうなっているのか。不備のない法定書面を用意し、交付をきちんと行っているのか。書面なしで登録した会員の解約に応じているのか。日本企業のストアインを信じて登録した会員に対して、そして業界に対して、きちんと説明を行ってしかるべきだ。雑誌に記事広告を出稿するなどPR戦略を強化する暇があるのであれば、早々に義務を果たすべきだろう。
【記者の目】
本紙17年1月26日号に、【本紙徹底取材〈「デュブリ」の実態に迫る〉】を掲載して以降、本紙編集局には毎月数件デュブリに関する問い合わせが寄せられる。問い合わせ内容は勧誘実態に関する情報提供や、一方的なクレーム、消費者相談が多い▼目を丸くするような、とんでもない問い合わせもいくつか寄せられた。「上位者から、『日本流通産業新聞に掲載されたデュブリに関する内容は事実と違う。抗議文を送っている』と聞いたが本当か」や、「デュブリの代理店が開催しているセミナーで『日本流通産業新聞社は、デュブリに関する記事の誤りを認めた。あわせて、新聞社の代表者が謝罪をした』との説明があったが本当か」という開いた口が塞がらないような内容だ。元会員などに取材をすると、会員間のLINEグループでも同様の内容が流布されているようだ▼本紙は抗議文などは一切受け取っていないし、記事を掲載した号の発行以降、デュブリ側から何の連絡もきていない。それ以前に、デュブリ側は本紙からの質問に一切明確な回答をしていない。野萩GMとの電話連絡がかなった際も、根拠のある反論はなかった。記事の内容に誤りがあるとの指摘も受けていないし、当然、「デュブリ」側に対し謝罪をした事実もない。この件について、事実確認をしようにも、野萩GMが接触を回避しているのが現状だ▼会社がそのように説明を行っているのか、会員らが勝手に言っているのかはわからない。ただ、事実無根なことを、大々的に流布する背景には、面と向かって正当な反論ができる材料がないという事情があると勘繰られても致し方ないところだろう。質問状に対しての回答を改めて求めるのと同時に、誤った情報を流布したことについて、納得のいく説明を求めたい。
【本紙徹底取材】物議のデュブリ
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