【通販・通教・EC〈2020年〉売上高ランキング】 〈上位520社売上高調査〉実質伸び率8.3%増/大手企業が一気にECシフト

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 日本流通産業新聞が20年12月に集計した「通信販売・通信教育売上高調査〈冬季〉」によると、上位520社の合計売上高は8兆8480億7300万円だった。前年実績と比較可能な182社で算出した実質伸び率は8.3%増となった。1位のアマゾン(日本事業)はコロナ禍に成長をさらに加速し、独走状態を確固たるものにしている。大手小売企業はECシフトを一気に進めており、その傾向は今後も続く。

 アマゾン(日本事業)の売上高は、米アマゾンが発表した19年12月期における日本事業の売上高160億200万ドルに対して、19年の平均為替レート(TTB、1ドル=110.05円)で円換算して算出した。マーケットプレイス出品手数料や、有料会員サービスの年会費、各種ウェブサービスの売上高を含んでいる。
 アマゾンの日本事業における物販の直販売上高の比率について、アマゾン出品者のコンサルティングを手掛けるアグザルファの比良益章社長は、「最低でも8割を占めるのではないか」としている。
 さらに比良社長は、「流通総額における出品者販売の割合や、プライム会員数が順調に拡大していることなどを考えると、出品者手数料とプライム年会費を合わせた売上高は多めに見ても、2500億~3000億円程度ではないか。それを差し引いた約1兆5000億円が、ほぼ直販売上高の規模に近いと考えている」と分析している。


■20年はさらに成長か

 20年12月期の業績は明らかになっていないが、確実に拡大しているだろう。コロナ禍で需要が拡大した日用品や衛生用品などはアマゾンの強みを発揮できる領域だ。さらにリモートワークが増えたことで、これまで仕事場で購入していたオフィス用品をアマゾンで購入するユーザーが増えただろう。
 巣ごもりが続く中でアマゾンの動画配信サービス「プライムビデオ」の視聴者も増加している。動画を視聴するためにプライム会員になり、そのことでアマゾンの利用頻度が高まったユーザーもいるはずだ。


巣ごもり関連が好調

 コロナ禍で好調なのはアマゾンだけではない。食品、日用品、家具、家電など家の中で消費する商材は軒並み成長した。テレビショッピングも好調だった。
 ビックカメラは20年8月期のEC売上高が前期比37.5%増の1467億円になった。店頭顧客のEC誘導に加え、流通規模が拡大しているECモールでの販売も好調に推移している模様だ。


■新たな需要も誕生

 意外なところでは、家の周りで外遊びを楽しむ「おうちキャンプ」の人気が高まったことでアウトドア用品が売れたり、ファッション分野ではマスク以外にも家の中や近所への外出に適した「ワンマイルウエア」が売れたりした。新たな需要が生まれている。
 ユニクロは20年8月期のEC売上高が同29.3%増の1076億円になった。廉価なカジュアルウエアはコロナ禍の消費志向に合っていた。実店舗顧客の会員化を進めていたことで、ECへの誘導もスムーズだった。
 健康不安の高まりから免疫やダイエット関連の健康食品も売れたようだ。化粧品はスキンケアやアイメーク関連が売れた。美容機器の好調も目立った。


■通販ファースト継続

 リアル店舗を展開している多くの企業では、コロナ禍において通販ファーストの事業戦略にかじを切った。システムや販促への投資が加速したほか、人員をリアル店舗から通販・EC事業に寄せる動きも活発だった。
 コロナが収束すると、若干の寄り戻しはあるだろうが、大半の企業は通販・EC重視の戦略を崩さない見通しだ。21年も通販・EC市場の拡大は続く。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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