〈食品宅配各社〉 コロナ禍で直近売上が急伸/巣ごもり需要を順調に獲得

  • 定期購読する
  • 業界データ購入
  • デジタル版で読む

 新型コロナウイルスの影響により、自宅で食事をする機会が増えたことで食品宅配各社が業績を伸ばしている。ミールキットが主力の業界最大手、ヨシケイ開発(本社静岡県)の全国のFC65社の3―5月度におけるFC合計売上高は前年同期比6%増で推移。ワタミは、小中高校の休校要請が発表された直後のキャンペーン施策が消費者の反響を集め、受注開始から3日間で約400万件の電話があったという。これまで通販・ECの拡大に押され、苦戦していたミールキットの販売企業も、3月と4月度の受注がプラスに転じる例が目立っている。各社は、コロナ禍によって取り込んだ巣ごり需要を継続的な利用につなげたい考えで、その成否が年度の業績を左右しそうだ。

■ワタミは3日で400万件の電話

 コロナの影響による消費者支援策に早い段階で積極的な動きを見せたのが高齢者向け弁当宅配「ワタミの宅食」を展開するワタミ。政府が休校を要請した直後の2月28日に、支援策第1弾として小中高生を対象に「臨時休校支援(商品代金相当無料)」を発表。これは昨年10月にCEOに復帰した渡邉美樹会長によるトップダウンで決まったという。この施策がマスコミでも大きく取り上げられた。
 本社と長崎県、岩手県内にあるコールセンター計70席で電話を受け付けた。受注開始から3日間で約400万件の問い合わせがあり、製造のキャパシティーの上限となる1日2万7000食(計約50万食分)の弁当を4週間届けた。
 3月9日には第1弾施策を利用できなかった人に向け「緊急・子育て家族割」を発表、これには計1万食の受注があった。自社配送エリア外からのニーズもあり、冷凍総菜の通販「ワタミの宅食ダイレクト」による販売も始めた。
 ワタミでは、これまでシニア層を主たるターゲットにして顧客開拓をしてきた。コロナの影響を受けての取り組みは、これまで顧客として対象としてこなかったファミリー層がターゲットだ。「いずれは顧客対象を広げようという戦略はあったが、その時期が早まった」(曽我部恭弘執行役員・宅食事業本部長)と話す。
 販売員「まごころスタッフ」が既存客に配布し、食品などを掲載したチラシ「まごころ商店」(=写真)による売り上げも20%増で顧客単価アップに貢献。対面での手渡しができないため、置き配に対応する「留守宅BOX」の貸し出し件数も倍増したという。この間、さらにメディアによる露出が増えたほか、新聞折込チラシを実施。こうした施策の結果、3月・4月度で食数が前年同月比10%増となった。
 高齢者向けの弁当宅配「宅配クック ワン・ツゥ・スリー」をフランチャイズ(FC)展開するシニアライフクリエイト(本社東京都)は最近、顧客単価が増えた。
 通常はケアマネジャーからの紹介を得て利用者を開拓することが多いものの、訪問して営業することが難しいため、新規顧客の開拓が思うように進んでいない。一方で、デイサービスを利用しない人が多くなったことで、週3回のペースで弁当を注文していた人が週5回などに増やすケースが目立った。これにより顧客単価が増加し、食数も拡大したことにより売上高は前年同期比10%増と計画通りに進んでいるという。
 3ー5月度は、加盟店の開拓を40~50店舗と計画していたものの、5月21日現在までに2店舗に留まっている。案件そのものはあるものの、営業社員が対応できないことで契約がうまく進んでいないという。


■らでぃっしゅ、大地は単価向上

 オイシックス・ラ・大地傘下の食品宅配「大地を守る会」と「らでぃっしゅぼーや」も会員を順調に伸ばす。

(続きは、「日本流通産業新聞」6月4日号で)

ワタミは弁当以外の受注で単価が向上

ワタミは弁当以外の受注で単価が向上

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

Page Topへ