カットされた食材とレシピがセットになった「ミールキット」において、食品宅配やEC、ネットスーパーの競争が激しさを増している。食品宅配大手で、ミールキット市場をけん引してきたヨシケイ開発(本社静岡県)は、主力のミールキットをテコ入れするほか、対面営業に加え、ウェブからの注文を増やしてECやネットスーパーに対抗する。NTTドコモが7月に開始したEC「dミールキット」は、すでに1000人の定期会員を獲得。シャープが手掛けるEC「ヘルシオデリ」も順調に利用者数を増やしており、11月14日には冷凍品を投入するなどサービスの幅を広げていく。ECではオイシックス・ラ・大地が先行するミールキット市場。各社の取り組みを踏まえ、ミールキット市場の最新動向を探る。
■食品宅配 ヨシケイはウェブ受注を強化
ヨシケイ開発は11月8日に静岡市内で開催した戦略発表会「第4回 ヨシケイグループ共栄会」を開催、林雅広社長は19年9月期の売上高が過去最高となったことを報告した。好調な業績を後押ししたのが全国展開を始めたカット野菜「カットミール」で、現在までに40FCが販売展開する。「想定以上の受注があった」(林社長)と好調ぶりを示した。これを踏まえ、10月からは、本部直営のヨシケイ東部で、3品構成の「カットミールプラス」の試験販売を開始した。
一方で、主力のミールキット「プチママ」の出荷数の減少傾向に歯止めがかからず、全体の出荷数の低迷に影響を与えていると分析。低迷の要因については、創業以来続けている1週間分(5日分など)をセットで販売し、価格も固定化していることを挙げる。ECでは1食から購入できる企業が多いこともあり、ユーザビリティの向上を課題に抱える。すでに一部のFCでは、1日単位で販売を導入しており、20年2月には食数に応じた価格設定を始めることで「プチママ」の再購入につなげていく。
20年9月期は、ヨシケイグループの利用者、非利用者を対象にしたインタビューやアンケートを実施。前期から掲げる「マーケットイン」を意識した商品開発の参考にした。「すまいるごはん」をリニューアルするほか、カットミールやプチママ、定番の三つのメニューについて、顧客の要望に基づいて刷新していく。
家電メーカー、パナソニックが販売するIoT家電と協業も始めた。パナソニックが運営する会員制サイト「クラブパナソニック」の1000万人の会員や、会員数16万人が登録するレシピサイト「キッチンポケット」からの集客を目指す。
具体的にはIoT家電「Bistro(ビストロ)」と共同でメニューを開発。「キッチンポケット」のサイトやアプリ内にバナーを設置するほか、パナソニック用に特設ページを開設し、試食などで誘導する。
全国で2割弱あるとする未配達エリアへの対策も進める。パナソニック経由で、共同開発した単品の中華商品5種類をセット販売する。FCではなく、メーカーから宅配便で直送する仕組みを取り入れる。
11月2日から年内をめどに、FCの配送エリア内の家電量販店での試食を展開し、最大で93回の実施を予定する。
ウェブ受注の強化も視野に入れる。認知度向上を目指すことを目的に、SNSを活用する。UI(ユーザーインターフェース)を見直したり、CRMを進化させる。新規会員獲得は、ウェブに注力すると同時に、配送兼営業スタッフ「スマイルスタッフ」の対面力を生かした戦略も進める。
既存顧客の囲い込みを目的に、顧客の会員化も視野に入れる。
(続きは、「日本流通産業新聞」11月21日号で)
〈食品宅配・通販〉 過熱するミールキット市場/宅配、EC、異業種で競争激しく
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