【迫る消費増税】 「冷え込み対策しない」6割超/キャッシュレス還元事業も登録ピークに

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 10月1日の消費税率の引き上げまで残り2カ月弱となった。各社が増税前の駆け込み対策や増税後の対策の検討を行っているが、増税が与える市場のインパクトは「限定的」と考える無店舗販売企業が多いようだ。本紙がこのほど行った消費増税に関するアンケート調査結果によると、通販・訪販の無店舗販売実施企業85社のうち、「増税後の反動(冷え込み)の対策を行わない」としたのが64%の54社だった。

■のしかかるコスト増

 19年に入ってからは、通販・訪販業界のどちらも、増税に伴うシステムの改修に追われたようだ。基幹システムの一つである「商品マスタ」を整備したという声が多く聞かれた。ほとんどの事業者が、請求書や納品書のレイアウト変更の改修を行ったとしている。「軽減税率対象商品だと分かりやすいサイト表示を徹底した」という通販企業も複数あった。
 多くの企業は「増税分のみを値上げする」としている。こうした企業からは、「商品パッケージやパンフレットの価格表記を変更した」(化粧品訪販企業)と言った声が多く聞かれた。
 増税後の対応として、顧客離れの防止などを目的に、「商品価格を据え置き、実質的な増税分は自社で負担する」という企業も多かった。こうした企業にのしかかるのが、資材や配送費の増税だ。宅配クライシスや資材となる紙の値段が高騰している。「増税に便乗した資材や運賃の値上げがあるのでは」(化粧品通販企業)と懸念する声も聞かれている。
 消費をできるだけ維持したまま、コストをいかに抑制するかが、各社の共通した焦点となっているようだ。


■モールの増税対応進む

 増税後の消費継続を救うカギとなる「キャッシュレス・消費者還元事業」も、対象事業者の登録がピークを迎えている。7月末時点で、全国で24万社が登録を申請。そのうち、通販企業は1万社程度だとみられる。
 ユーザーに5%のポイントを還元する同事業は、通販企業を中心に期待を寄せる声が多い。一方で、事業者と消費者の両方に周知が進んでいないと指摘する声も少なくない。
 そんな中、ECプラットフォームが出店・出品事業者のキャッシュレス還元事業への登録を受け付ける動きが活発化している。楽天、ヤフーは6月下旬、中小出店店舗を対象事業者として登録する手続きの受け付けを開始した。
 8月8日にはAmazonも対応すると発表。10月1日以降に、Amazonで中小出品事業者の商品を購入したユーザーに5%のポイントを還元するとしている。19年10月1日~20年6月30日の9カ月間、クレジットカードやAmazonポイントで決済したユーザーに、決済金額の5%分に相当する金額を即時充当するという。Amazonを通じて、10月までに登録申請を行う出品事業者が殺到する可能性がある。
 キャッシュレス還元事業について消費者の認知が進んでいないと指摘する企業も多い。認知の拡大には、中小事業者だけでなく、ECモールによる大規模な広告展開やセールイベントも必要だろう。プラットフォーマーと中小事業者が団結して消費減速に立ち向かう必要がある。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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