政府のIT企業に対する規制強化が進んでいる。自民党の政務調査会は4月23日、IT企業規制に関する第一次提言を公表した。市場の独占を抑止する新法の策定や、公正取引委員会の体制強化を盛り込んだ(表参照)。政府は国内外のプラットフォームが、蓄積データを活用して市場を寡占化したり、その優位性によって取引企業に対し一方的に不利益を与えたりすることを問題視している。プラットフォームには当然ECモールも含まれる。政策がモール運営企業との取引における公平性向上につながれば、出店者にとって有益となることも考えられる。
■情報開示を義務化
政府の懸念は、プラットフォーマーが情報優位性により、デジタル経済で独占力を形成することにある。プラットフォーマーは利用者である消費者・事業者の双方からデータを収集し、情報の取り扱い自体も制御できるからだ。
欧米諸国と連携しながら、プラットフォーマーの動向を把握する専門組織の創設も検討しており、諸外国とプラットフォーマー規制について足並みをそろえたい考えも見て取れる。
自民党政務調査会が提言に盛り込んだ新法は、「デジタル・プラットフォーマー取引透明化法(仮称)」。公取委が実施する独占禁止法の執行や、個別案件の審査を補完する法にすべきとした。
事業者に対する、プラットフォームの運用ルールの明確化や変更の事前通知、顧客情報への不当なアクセス制限の禁止など、情報の開示義務を中心に設計する必要性も指摘した。現段階では、新法の詳細や管轄官庁は定まっていない。
■公取委は取組強化
提言では、公取委による審査の拡大や、そのための体制強化の必要性にも言及した。プラットフォーマーによる個人情報の一方的で不当な収集・利用も防ぐ。そのために、これまで企業間取引に適用されていた独禁法の「優越的地位の濫用規制」を、消費者との取引にも適用できる体制を今夏までに整えることも提言に加えた。
消費者のデータの扱いについては、経済産業省が事務局の「デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する検討会」で、ルール作りについて検討が重ねられている。一つのプラットフォームに蓄積されたデータを、別のプラットフォームでも再利用できる規定を検討している。
公取委は「体制強化については、党の提言を受け止めて検討していく。対消費者取引における『優越的地位の濫用規制』の適用についても進めている」(経済取引局)と説明する。
実際、公取委はプラットフォーマーへのヒヤリングや調査を重ねる取り組みを強化している。アマゾンジャパンが、出品者の原資による1%以上のポイントを付与する制度を取りやめると変更するなど、公取委の調査がプラットフォーマーの動向に影響する事例も出てきた。
(続きは、「日本流通産業新聞」5月9日号で)
〈強まるIT企業規制〉 政府は新法を提言/モール出店者には有益か
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